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2013年10月2日水曜日

ファッション雑誌からの脱線:『Otherness』について考える。

今日、かなり久しぶりにファッション雑誌を購入。いつもは仕事上ビジネスマガジンや科学系の雑誌を読む事が多いので、広告を買っているような雑誌はいかがなものかと思う一方で、まあまあ時にはね、こうオシャレなものを見た方がいいんじゃない?ということで、分厚いのを3冊とりあえず購入。

そもそも今時誰が紙版の雑誌を購入するんだ…とは思いつつも、結構ヘビーな雑誌たちをドサッとソファーに投げ、PukkaのAfter Dinnerハーブティーを作り、お気に入りのBodumの保温マグカップに入れて飲む。

ペラ。ペラペラ。

まずはBazaarの2013年10月号から。今月号は『The Beauty Issue』とのこと。ビューティーからほど遠くなっている私にぴったりではなかろうか。ふむふむ。別冊子になっている『Bazaar Beauty Hot 100』。

Best 1は『Creme de la Mer』のThe Moisturizing Soft Cream。ザ・モイスチャライザーですな。

ちょっと気になったのは、RODINの『olio lusso』。最近顔がカサつくんです。これも加齢ってやつか。あとは雑誌に挟まっていた高級デパートLibertyの別冊の広告雑誌にあったMario Badescu Skin Careの『Drying Lotion』。もともと甘いものは苦手だったのが、最近時々チョコレートを食べるようになると、なんと年甲斐もなくニキビが出来るようになってしまい、ついでに仕事が忙しくなるとあごニキビ!『こいつらを寝ている間に本当にやっつけてくれるのであれば安い買い物なはず』と熱い眼差しを向けてしまう。

嬉しいことに、いくつか私も良しとするものがあったが、その中でも高得点だったのは『Aqua di Parma』の香水『Aqua Nobile』が取り上げられていたこと。3種類あるユニセックスのもので、香水好きの人にはどれもオススメ。街中で香りがすると思わず振り返るほど好きです。

などなど、まあそんな感じで写真が多いものをわざわざ価格まで確認しながら舐めるように読みすすめる。でも活字好きの私には、ファッション雑誌なんて大して読むところないよなー、なんて思いながらも本誌の記事もちゃんと読んでいると、ある記事にこんな表現があった。

『The power for otherness』。

Othernessとは要するにother/differentであるということ、という意味。

ファッションは流行を取り入れることこそ正しいような印象があるが、もともとはOthernessを求める、人と違う格好を取り入れる(シャネルのスタイル、プラダのバックパックなど)ことこそがファッションの原点なんだ、という内容の記事だったが、でもこの記事自体よりも、この『Otherness』という言葉が何だかとても心に残った。

当然英語としては意味が分かるが、ふと、そういえば日本語では何というんだろうと思い、調べてみた。でも『違っていること、異なっていること』ということしか出てこず、しっくりした名詞がない。

そこから少し話がずれて、じゃあ『Togetherness』(togetherであること)ってなんだろう?と思うと、『連帯感』『一体感』という日本語がある。じゃあ『Twosome(twoであること)』は?となると、『2人組』っていうちゃんとした日本語がある。

この『Otherness』という言葉だけがしっくりした日本語が出てこないのが、何となく日本であるような気もした。多分日本ではそれを『外』という漢字で表現していたのかな。『外部の人間が、、、』とか『外人』とか。『内』と『外』という対比で、『自』『他』とは違うレベルの比較。『自』も『他』と近しい立ち位置で『内』入りを目指す、それが日本的な発想か。

もう少し脱線して、『Belonging』も調べてみた。『belongしている』という意味の日本語が好きそうなこの言葉には『帰属』という固い訳が出てきた。

でも、そこには『安心できる関係で感じる幸福』というまさにビンゴ!な訳もちゃんと記されていた。『内』の中にも『Other』がある、そんな海外生活の中で時折感じる『belonging』を、『幸福』という名詞で汲み取ってくれたことに、なんだかホッとした。

はあ、これで安心して後の2冊もじっくり読める♬

2012年12月23日日曜日

出すぎた杭も使い用なのでは?


【今回のテーマ:出すぎた杭も使い用なのでは?】


今朝、日経ビジネスを読んでいて、最近駐在員の間に『OKY』という表現があると読んで吹き出してしまった。日本本社に対する不満で『O(お前が)K(来て)Y(やってみろ!)』の略らしい。面白い~。

『グローバル人材の幻想』という企画のようで(リンクは最後に参照記事として掲載)目を通したが、幻想として以下3点が挙げられていた。
①機会を与えれば人は育つ
②海外人材ならいつでも採れる
③うちは人材を活かしている

どれも確かにそうだなあ、という内容で、読み進める。

最後は

『海外の優秀な人材にとって、日本企業は想像以上に魅力を失っている。日本人のグローバル化も途上だ。日本の本社が発想も組織もグローバル化しなければ、人材不足が将来の海外事業展開の大きな阻害要因となりかねない。足を止めた企業に未来はない。』

と締めくくられていた。

なるほど。

もともとグローバル化に注力していた企業、あるいは商社のようにそもそもグローバル思考が根底にある企業の海外展開はすでに確立しているし、売り場としての海外市場というのもある程度進んでいると思う。だから多くの会社にとってグローバル戦略のネクストステップは、組織戦略、人材戦略という分野になるのだろう。

ちなみに、この企画でも取り上げられていたが、日本ではGEのような会社がグローバル化の成功例として提示され、あたかも全般的に米系企業が進んでいると見えるかもしれない。ただ現状はそうでもない。日本と同じように、売り場確保では一定のプレゼンスを確保し、組織、人材のグローバル化はこれから、という企業も多い。

ただ、個人的な経験から言えば、海外の日系企業(海外支社)と米系企業の海外支社を比較して組織、人材戦略で圧倒的に異なると感じる点がある。あくまでも個人的な経験なので、海外にいる一人の日本人に対しどういう対応がなされたか、という一例でしかないことは認める。ただし、海外5カ国で勤務経験を持つので、複数カ国のデータポイントに基づいて評価しているとは考えている。

①『ポテンシャル』に対する評価の違い
米系企業の方が基本的なスキルセットや経験ベースを持っていると、ポテンシャルを買う意欲がより高い。日系企業はとりあえず下のポジションから採用してみよう(駐在員の下につける)、という動きを見せる。なんせ、日本企業では昇進スピードが遅いので、「とりあえず」から次のステップへの道のりが長い。そうなるともちろん採用される側としては、ポテンシャルを買ってくれる会社を選択するだろう。

②採用は『人材確保合戦』であることに対する認識の違い
米系企業の方が採用をより戦略的に捉えており、人材は取り合いと見なしている。そのため、傾向として、結果、給料が高い(個人的な経験では日系の提示額の倍相当を提示してくる)。日本ではここのところずっと買い手市場の雇用市場であることからか、海外でも人材は奪い合い、ということを忘れているように見受けられる動きも多い。日系エージェントもコミッション狙いであるため、低い給料でも「こんなもんだ」と受け入れるように要求してくる。そういうことからか、全般的に海外の日本人雇用市場の給料は低迷している。ある国では過去10年間給料レベルが推移していないということも聞いた(要するにインフレ調整さえされてほとんどされていないレベルとか)。

同じようなことが一般的であれば、やる気のあるローカル日本人はローカル企業(この例では米系企業)への就職を選択するだろう。

さらに言えば、海外で働く日本人としていつも見過ごされているなあと思うのが、日系企業による積極的な海外在住日本人の活用だ。海外の大学や大学院やMBAを出た人材をその地で採用して日本との連携と現地の経営にもっと役立てていくことはできないのか、と感じる。

現地にいる優秀な日本人ほど日系企業との親和性が高い人材グループはないと思う。日本での採用ほど、粒ぞろいの人材を見つけることは難しいかもしれない。スキルセットや経験も千差万別であることは確かで、日本ほど大きな母集団から採用するわけではないからだ。だから自社の求める人材に該当する人はごく一部だろう。

ただ、海外で生きて行く、特に駐在員や交換留学のように会社や学校に所属することなく一人で海外で活路を切り開いて行く、というのは、それほど楽なことでもない。まさにこれも『OKY』、お前が来てやってみろ、の世界だ。だから大抵の人は現地事情に通じているだけではなく、精神的にもタフな人材も結構多い。

ただ、往々にして『海外にいる日本人は自己主張が強い』と捉えられてしまう。『出る杭だが、打つと外人並みに戦ってくる好戦的な人材』と見えるようだ。出過ぎた杭も使い用だと思うが、やる気より、駐在員の指示をそつなくこなす無難な人材が求められる。あるいは、採用してもまずは数年日本勤務が前提だとか、採用した後も日本流の人材管理の元で何となく年功序列の対応となり、特に採用後のキャリア展開のサポートをしていない。そういうことが数年続けば当然他に採用口を見つけられる人材はどんどん転職していくだろう。そうするとまたローカル日本人の評価が下がり、『ローカル日本人はすぐ辞める』となる。『相手(採用された側)がコミットしないなら、こっち(採用する側)もコミットしない』、という発想となり、当然採用される側もコミットしない会社に対してはコミットしないため、人材の流動性は高まるばかりだ。

もちろん、すべての日系企業がこうである、というわけではない。面白い取り組みをしている会社が最近増えているということですばらしいと思う。ただ、この日経ビジネスの企画で『周期遅れ』、と題されていたのをこの企画記事とは異なる角度から見てもうなずける。

『日本の技術神話を捨てろ』などという厳しい記事もときどき見かけるが、とはいっても日系企業の持つ技術は高い評価を受けるべきだと思うし、研究開発に当てる金額も情熱もトップレベルであることは間違いない。サービスの質も高い。海外事業における組織戦略、人材確保についても問題意識が低いわけではないと思う。だからこそ、売り場としての海外戦略から、次のレベルのグローバル化でももっと大胆な動きを見たいな、と個人的には思う。

ちなみに、この記事で『OKY』以外にも、人材登用の『卒業型』『入学型』『ニコイチ』という表現を学んだ。『卒業型』とは、すでに役職・役割に求められる技能を既に十分備えた人材を任用する方法、『入学型』は不足している技能もあるが、今後の成長ポテンシャルを買う考え方という。『ニコイチ』というのは、入学型の登用の際にメンターをつけ、『2人1組』とすることらしい。なるほど、勉強になりました。

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参考記事:
日経ビジネス
特集 グローバル人材の幻想(2012年12月24・31日号)

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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2012年11月23日金曜日

ノマド・メンタリティを培う


【今回のテーマ:ノマド・メンタリティを培う】

今朝、レバレッジ・マネジメントの本田 直之さんの記事を東洋経済オンラインで拝読。『30代で始める「ノマド・トレーニング」』というタイトルで、大きくうなずける内容だったのでご紹介までに。

30代で『ノマド』としてやっていけるだけの基盤を培おう、という内容の記事。ちなみに、ノマドとはなんぞや、というところで、記事の筆者はこうコメントしている。

ーーーーー
ノマドとは、働き方というよりは生き方です。「会社を辞め、モバイルを駆使してカフェで仕事をすること=ノマド」というイメージが独り歩きしている感もありますが、私の考えはまったく異なります。
「自由でオルタナティブな働き方」を含めたライフスタイル全般を指すもの、それがノマドではないでしょうか。それゆえに組織に属していてもノマドライフを送っている人はいますし、フリーランスであっても制約が多い「縛られた生き方・働き方」をしている人もいます。
何を選ぶかは個人の自由なのですから、どちらが良い・悪いではなく、自分に合った生き方・働き方を、それぞれが自分の意思で選ぶ時代が来ていると感じています。
ーーーーー
(出典:「ノマド=カフェで仕事」ではありません、一部抜粋。
 http://toyokeizai.net/articles/-/11771)

最近年代別のビジネス本が多いみたいだが、個人的にも30代はかなり重要なのではなかろうか、と感じている。人生最初の20年は多くの場合が親のサポートの中で生きているため、初めて自分で生きた10年の結果が見えてくるのが30代。仕事を初めて10年が経ち、それぞれが違う道を歩き始めていると感じる中で、自分はどうしていきたいか。自分の能力や限界も見えてくる。中だるみも始まる。そういう中で一念発起というか、これから30年も頑張るぞー!と思えるためには、自分の中で(他人任せではなく自分で)新しい風を吹かせることが必要になってくるような気がする。

ただ、『攻め』と同時に『守り』も重要になる。だから、この記事の『マルチキャリアに挑戦する』というのは理にかなっていると思えた。そういうことを考え始めると、自分には何が足りないかを考える機会にもなる。新しいことに挑戦しようと思えば、何となく同じことをしてしまう『ルーチン』も改めなければならない。

記事でも書かれている通り、『自分の市場価値を知る』というも重要なポイントだと思う。以前、自分をフリーエージェントと考えた方が現実に合っている、と書いたことがあるが、特に海外で生活していると『誰のどのようなニーズに応えられるか』と『自分が何をしたいか』の擦り合わせで転職先や仕事内容、そして待遇が決まってくる。転職という機会がないと社内人事の評価で報酬が決まっていくので、なかなか外部から見た自分の価値、というのが分かりにくいと思う。だから確かに転職サイトに登録することで誰がどのような面で自分を評価してくれるか見えてくるので面白いのではないか。

その点を意識していると、やりたいことをやりたい放題にやるのではなく、少し付加価値が出るような方向へ動くよう意識するようになる。加えて履歴書の書き方に対するフィードバックもある。私も過去に経験があるのだが、どれだけ『この分野は希望していない』、と主張しても、自分が過去経験がある一定の職種ばかりから声がかかることがあった。そうなると、①他の部分を強調することで希望している分野へのアピールを強める、あるいは②『やっぱりそこを売るしかないかねぇ』と考えを変える、という対策ができる。②を選んでも、同じ分野で同じことをするのではなく、少しアピールの仕方を変えて違う形で花咲くことを狙う『軌道修正』も可能だと思う。

この記事を読みながらついでにぼんやり考えたのは、これからの世代には、多分『定年』という考え方がなくなるんだろうな、ということ。80まで生きるようになることを考えると、65歳で定年となっても15年も仕事なしで生きていくというのは場合によっては経済的に厳しいだけではなく、何もしないには長過ぎる。そうなると定年という発想よりも、経済的に退職出来る人は仕事を辞めるが、仕事を継続するという選択もできるのでは。働き続ける選択をする可能性もあると考えると、若いうちから倒れてしまうような働き方や女性が結婚や出産を理由に働きづらくなる環境ではまずいのではないか、と思う。右に倣えの働き方をしていると、死ぬまで働けない。

ただ、残念ながら自分の世代では環境が大きく変化するとは思えない。そうなると少しでも状況がいい会社に移ることを目指すとか、個人レベルで対応していくしかない。乗り切っていくには、この記事にあるように、30代で出来る軌道修正やアクセルの踏み込みはしておいたほうがいいということなのだろう。受け身という選択肢はなさそうだ。腹をくくるしかないみたいだな~。

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【参考記事】
30代で始める「ノマド・トレーニング」
(レバレッジ・マネジメントの本田 直之さんの記事、東洋経済オンライン 2012年11月22日付)

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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2012年11月20日火曜日

日本では自由=無責任?


【今回のテーマ:日本では自由=無責任?】


週末に日経ビジネスを読んでいたら、こんな面白い記事があった。

『個人の創造性を根絶やしにする日本社会の「立場主義」 安冨歩・東京大学教授に聞く』


(以下、上記記事より一部抜粋) 
ーーーーー
安冨:
日本というのは異常に専門家を重視するんです。これは面白いんだけど、原発に賛成する人も反対する人も、ものすごく専門家の言葉を重視する。ヨーロッパの人はそんなに専門家の言うことを聞かない。イギリス人なんか特に、専門家に対して評価が低い(※1)。

シビリアンコントロールと言うけど、あれは「文民統制」ではなくて、「素人による統制」なんです。シビリアンとは、プロフェッショナル(専門家)に対しての素人。故・森嶋通夫先生が言っておられたのですが、日本はプロフェッショナル・コントロールの国だと。

日本人が言う「素人」とは、「立場のない人」です。立場は責任と結びついているから、責任を負わない素人が判断なんてできない、と。逆に専門家とは「立場のある人」。

(中略)

ヨーロッパ言語における「選択」の概念を考えると、選択は自由と結びつきますが責任も生み出します。「選択、自由、責任」がセットなんです。

ところが日本では、自由と結びつくのは「無責任」なんです。なぜか。日本では責任は立場に結びついているからです。「立場がない=自由=フーテンの寅さん」なんです。

日本社会における自由の根源は何かというと「無縁」です。「無縁=自由=責任がない」。これに対して「有縁=不自由=責任を負う」。つまり自由と責任が対立概念なんですね。ヨーロッパ言語では自由と無縁は全く結びつかない。不思議なんですよ。

有縁、無縁は中世にできた家制度と結びついていて、家制度自体は高度成長期に崩壊して、戦争によって鍛えられた立場主義に変質しました。
ーーーーー

特に後半はとても興味深いポイントだなあ、とちょっと考え込んでしまった。『自分の意思で選ぶ』ということが西欧的発想では『自由』、そして『結果には責任を取ることとなる』ということが結びついているのは理解していたが、日本では何かずれているというところまでしか理解していないかったので、この『自由=無責任』という構図が見えて、大きくうなずいてしまった。なるほど。

しかも『有縁=不自由=責任を負う』が、しかし『=責任を取る』とは必ずしもつながっていないのが日本の現実に見える。すぐ連帯責任を持ち出すところも、責任の所在が明確ではない(責任の所在を認めない)、という建前と現実というまた日本っぽい観念が入ってくる気がする。

少し話はずれるが、欧米(※2)の会社はフラットだとよく言われることがある。私が以前勤務した会社でも確かに年功序列ではないし、おそらく日本では課長に相当するミドルマネジャー的なポジションが少なかったこと、タスクフォースなどプロジェクトベースで立ち位置が多少変わったりすることがあるので、日本の部長、課長、係長、のような構造よりもフラットでフレキシブルだった。下も上に対してどんどん提案していくことなども考えれば、より全員参加型に見えるかもしれない。

ただ、基本的には『責任の所在』という観点から組織を見た場合は大抵非常に明確だったように思える。チーム表彰なども当然あるが、基本的には最終責任は誰が負うかは明確。だから給料格差があるし、何か不祥事が起きれば特に最終責任者が退任するとか減給するとか責任を取ることになる。もちろん成功を導きだせば昇格につながる。根本的に立場が責任と直結している。だから日本企業の不祥事の際にトップが辞任しないことは『意味が分からない』とコメントされる。(正直日本人でも意味が分からないと思っている人も多いと思うが。)そう考えると、日本の立場主義は主義・主張だけであって、現実にはとても緩い気がする。

週末に複数の日系ビジネス誌を読み漁って少し最近の話題などにもキャッチアップしたが、社内の変革を進め大きく変わろうとしている企業や有望なベンチャー企業も多くある一方で、未だにこんなことがあっているの?と正直びっくりするような話もある。オリンパスにしても野村にしても津波後の対応にしても、悪い話の方が海外で取り上げられやすいのが残念だなあと思う。

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※1)多少余談だが、上記の『イギリスなんか特に、専門家に対する評価は低い』という点は若干気になった。3.11の津波の際の日本の原子力事情に対して、原子力に頼らない割には欧州で最も冷静な論調だったのはイギリスだと個人的には考えている。素人が科学者の意見を聞き、冷静に判断しておらず、感情論に走っていたとしたら、もっと違う反応だっただろう。その他、国営放送であるBBCWORLD SERVICESへの評価が高いのも、同社ジャーナリストのレベルの高さに加え、事実に基づき客観的に判断したいという土壌が少なからずあるからではないか、と思う。

※2)欧米とはいっても国によってもかなり企業文化は違う。個人的な経験では『社内における弁論の自由』という観点では、オランダが一番フラットだった。『上司にどんどんモノ申せる奴は昇進する』とオランダ人の先輩も言っていた。私はオランダからアメリカに転勤したので、オランダ文化を持ち込んでしまい、直接的な物言いとノーという部下として多少アメリカ人上司に引かれたことを覚えている。


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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2012年11月9日金曜日

Sayonara to the corporate life


 A+S Project『気になるあの記事この記事』は、スタッフが面白いと思った記事や情報をまとめ、軽~いトーンでコメントや感想、考察を書いているもの。

そういうご理解で読んでいただき、関心を持たれた方は関連記事や原文にもアタックしていただければと思います。 

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【気になるあの記事この記事】
大企業にサヨナラ、日本のアントレプレナー

記事の紹介
タイトル:Sayonara to the corporate life
出典:Financial Times (November 7, 2012)
原文:英語


(あくまでもこの記事だけを読んでも理解できるよう、内容を簡単にまとめ編集してある点、ご了承ください。一語一句正確に知りたい方は是非原文にチャレンジしてください!)

2007年、日系では最大手のコンシューマ機器メーカー、パナソニックを退社した岩佐琢磨氏は、東京でコンシューマ機器メーカーCerevo社を立ち上げた。大手メーカーでも厳しい状況の中、である。『特に不安は感じていませんでした』と34歳の彼は語る。会社名はConsumer Electronics Revolutionを省略したもの。自分自身のことを『楽しく挑戦を感じられることをやらないと駄目なタイプ』という彼は、長めの髪とオシャレな眼鏡という格好で、自社オフィスの角際でもつれたケーブルや機器の詰まった段ボール箱に囲まれている。いかにもアントレプレナーといった印象だ。

岩佐氏のように、毎月の給料を手放し、大手企業への所属を評価する社会的傾向を押し切って独立するアントレプレナーは日本では未だ少数派だが、本当にやりたいことに取り組むことによる刺激や満足を求める人の数は増加してきている。個性や自信を全面的に押し出す姿勢も、チームワークや和を尊重する日本社会では未だに珍しい。

濃い色のスーツと滑らかなネクタイという装いの遠藤直紀氏はファッション業界関係者と見間違うばかりだ。現在38歳というが、2000年にアンダーセンコンサルティングを退職した際は何をすれば良いか分からなかったそうだ。しかし『情熱を持てることをしたかった』と彼は言う。結果、顧客行動分析に基づいたウェブサイトデザインを行うbeBit社を2003年に創業。

現在29歳の八木啓太氏は、富士フィルムを退職後、東京と富士山の中間地点の小田原市でBSize社を設立。デザイン性が高いだけではなく機能性にも優れるコンシューマ機器の製造販売を行う。高校時代、アップル社のスティーブ・ジョブスに強く影響された、と物腰の柔らかい彼は語る。

日本の新世代アントレプレナーたちは、大手企業での雇用の保障よりも『やりがい』を重視する傾向が強い。大手企業で勤務をすることの方が起業よりもリスクが高いと言う者さえいる。日本の大企業はジェネラリストの育成を中心としており、社外でも即戦力となるスキルを身につけることが難しいからだ。『短期的には大企業の方が雇用の保障はある。しかし、もし倒産でもした際には頼ることができるものがなくなってしまう。長期的に考えると、どこででも戦力として使えるスキルを身につけていくことの方が雇用の安全につながる』、と遠藤氏は言う。

岩佐氏はパナソニックへ入社した頃は独立して起業することなど考えていなかったという。しかしYouTubeが流行りはじめたころ、インターネット接続可能なテレビの開発を社内で提案。しかし上司に時期尚早と却下されたという苦い経験を持つ。この一件により気づきがあった。パナソニックは既存のテクノロジーをベースとした開発には長けているものの、自分がやりたいと考えているような新しいプロダクトカテゴリーの開発は不得意なのだ。

彼は今、Cerevo社で10名の社員と供にインターネット対応デバイス『Live Shell』などを開発・製造・販売している。Live Shellを用いれば、デジカメで取った(コンピュータを介することなしに)動画を直接インターネット上でストリーミング配信ができるという。すでにベンチャーキャピタルから2ラウンドで計3億7000万円の出資を受けている。Inova、Kronos Fund、Inspire、Neostella Capitalなどの日系ファンドが主要投資家だ。

大企業によるコスト削減やリストラが日本の若者の起業の追い風となっているという。八木氏の会社には、現在パナソニック勤務している高校時代の友人が加わることになっている。『コスト削減ばかりを命じられて、仕事がつまらなくなってしまった』らしい。

すでに生活水準は高いこともあり、日本人の間は、物欲よりも健全な社会構築への貢献意欲が高まっている、と、ベンチャービジネス育成に携わる日本ベンチャー学会の田村万里子氏はいう。昨年の津波災害の後、家族や地域のつながりの重要性が再認識され、特にこの傾向は強まっている、という。『若者の間で社会貢献を希望する人が急増している』と田村氏は言う。

『人は世界をより良いものにするために働くべきだ』と遠藤氏も言う。『何よりもまず利益の追求、という思考は世界を滅ぼすと考えている。』ヘンリー・フォードや松下幸之助など、世界を代表するアントレプレナーたちはこのような考えのもとに起業したという。『単に楽しみのために起業した人はすぐ辞めてしまうが、よりよい社会を作ることを目指す人は簡単にはあきらめない』と彼は語る。

八木氏は社会貢献へのコミットメントからベンチャーキャピタルからの出資を断ったという。『利益追求型のビジネスモデルを投資家から求められても、それは自分の意志に反する』というのが理由。しかしベンチャーキャピタルの出資なしにbeBit社は78人のフルタイムスタッフと20名のパートタイムスタッフを抱える規模にまで成長した。住友三井銀行、ホンダ、ネスレなどの大手企業を主要顧客に持つ同社は、10億円を超える資本金を持ち、台湾に海外初の支社をオープンした。

これまでの日本では、アントレプレナーを取り巻く環境は厳しいものだった。金融セクターはリスクを嫌う上、日本は文化的にも失敗に寛容ではない。しかし政府はスタートアップ企業へのサポートを強化し、低金利の融資や融資保証を提供するようになった。八木氏はBsize社設立にあたり、政府系金融機関から2000万円の融資を受けている。

しかし最大の環境の変化としてはインターネットおよびオンラインサービスの普及が挙げられる。これらツールを活用することで、資金の少ない中小企業にとっても事業展開のバリアが大幅に軽減された。岩佐氏はSkypeなどのオンライン通話サービスやFacebookを利用したマーケティングなど、オンラインでの無料サービス増加が特に起業を後押ししているという。『Facebookを活用したマーケティングは、世界中で簡単にプロダクト紹介が可能であり、非常に効果的』という。オンラインで商品販売を行う八木氏もこれ同意する。『これまでブランドを確立するのは非常に難しかったが、ソーシャルメディアの力で大手と競合することが可能となった』。


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【ここからがA+Sのコメント!】 

一昨日、有名ブロガーのちきりんさんと人事コンサルタントの城繁幸さんのしばらく前の対談記事、『大企業の正社員、3割は会社を辞める』(下記『関連リンク』にURL挿入)をたまたま読んだ後だったので、今回は英大手新聞ファイナンシャルタイムズで日本の大企業離れに関する記事を紹介することにした。ファイナンシャルタイムズは日本の企業文化に関しては特に批判的な記事が多いという印象があるが、今回は日本のアントレプレナーにスポットを当てた内容だ。

企業勤務経験なしに自分で事業を起こす人もいると思うし、今回取り上げられていた3名のように、大手企業での勤務経験を土台に起業するというパターンもある。ちきりんさんと城さんの対談でも、『今後、給料カーブの頂点が40歳ごろで600万円レベルという時代になれば、大企業勤務の社員の3割は会社を辞めるのではないか。特に優秀な人ほど、やってられない、と外へ飛び出すだろう』というコメントがあった。

本当にそうなって行くとしたら(個人的にもそうなると思う)、労働市場の流動性が重要になると思うが、でも、よくよく考えると、日本の外資系企業での労働市場ではすでにそれが達成されていると思う。2、3年で会社をどんどん変わって行く人は多い。なぜ外資系市場ではそれが達成されているのか?と考えた時に、実はホワイトカラー層の仕事が中心だからなのではないか、と思った。海外の企業にとって日本は製造拠点ではない場合が多いため、メーカーでもセールス、商品企画、輸出入管理、経理、IT、人事などの職務が中心。特に中途採用が中心の外資企業(かなり日系化している企業もある)では、そもそも新卒で入って来た社員はほとんどいないので、職歴と経験を売りに人が流れ込んでくる。

ただ、一歩下がって考えてみると、日本企業も製造拠点はとっくの昔に海外に移転しているため、随分同じような構造になりつつあると思う。ただ、発想においては全体的に以前の『製造業ありき』の在り方を引きずっているように思える。もちろん製造業が悪いと言っているのではない。日本の技術力の高さは国の強みだ。外から見ていると日本は少ししぼんでいる気がするが、まだまだ世界でも生活水準はトップレベルであることを国民が忘れているように思える。だからこそ、競争力を維持し高めていくためにも変化が必要なのではないか、と思う。

少し客観的に考えれば、今後の日本へのヒントはいろいろなところに隠れていると思う。変化の時期は個人レベルでも国レベルでも多少の思考錯誤は必須だ。大変な時期ではあるが、そろそろ『失われた○年』というのは辞めて、『取り返しに行く元年』と皆が言い始めればいいのにな、思う。


注:『海外ではああだ、こうだ』と私も時々言っている際に気をつけなければならないと思うことがある。それは、一般的に欧米においてもスキルを持ってファンクショナル・スペシャリストとしてどんどん転職している人たちはホワイトカラー層であるという点。それ以外の層の職業観はそれとはかなり異なり、例えば親子とも同じ工場で働くなどということもある。会社や土地への縛りがより強い傾向があることは事実だ。


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【関連リンク】 

日本ベンチャー学会:http://www.venture-ac.ne.jp/

ちきりんx城繁幸の会社をちゃかす(1):大企業の正社員、3割は会社を辞める
(ビジネス誠 2011年5月6日付掲載分)


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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2012年11月7日水曜日

転職しないでいい状況に賛同するとしたら


【今回のテーマ:あえて転職しないでいい状況に賛同するとしたら】

一度以前紹介したことがあると思うが、村山昇さんという人財教育コンサルタントの方のブログを読ませていただいている。一部読めていなかった時期があったので少しまた読みあさりさせてもらっているが、その中に『転職を考えるとき』という4回のシリーズ記事があった。

「転職」を考えるとき〈1〉~栄転と流転の分岐点は
「転職」を考えるとき〈2〉~現職を「卒業する・去る・逃げる」
「転職」を考えるとき〈3〉~転職のリスク
「転職」を考えるとき〈4〉~転職は会社への裏切りか
(各記事へのリンクは最後の関連記事に掲載)

テーマを見るだけで、日本での転職に対する見方を垣間みることが出来る気がする。『転職は劇薬である』『認識すべき6つのリスク』という表現などから、改めて、日本人はとても変化を恐れる国民なんだなあ、と感じてしまう。(特にこの村山さんのブログでは言葉をとても丁寧に選んであるという印象が強いので、だからこそ、そのインパクトを感じてしまう。)

先日少し仕事探しについてコメントしたように、欧米に住んでいると、特にホワイトカラー層では『転職』は日常茶飯事であり、上記とは全く感覚が違う。基本、栄転でも流転でも転がる方がいい、と考える人の方が多い。そもそも会社への裏切りを感じる前に、恩義すら大して感じていないドライな関係であることも多いので、あくまでも契約やコミットしたことにパフォーマンスが見合ったか否か、という客観評価もドライに行われる。

と書くと、私が転職賛成派として意見をツラツラと述べるに違いないと構えた方もいると思うが、とはいっても、当然大規模リストラは様々なドラマを引き起こす。泣いたり、怒鳴ったり、、、そういうことも起きるわけだ。逆にこんなリスクや劇薬をある程度回避できる状況がどれほどありがたいかについて考えてみようではないか、というのが本日の内容。

①安心して居座れる場所がある。
『本当はこの会社のサービスに興味がない』『もうやりたいことがない』『先が見えない』などと、同い年ぐらいの日本の友人の口からため息と同時に漏れる言葉だが、正直、相当の失敗をしない限り会社から見捨てられることはないというのも事実だ。アメリカで働いていた時、社員の3割がリストラになる状況を間近に見た身としては、まずは安心して居座れる場所があることをありがたがった方がいいのではないか、と思う。

②最初やったことが合わなくても社内異動で軌道修正ができる。
『総合職』という非常に曖昧なスタンスでリクルートされ、個人の意思は鑑みられつつも多くの場合は会社の人事主導で次の配属先を決めると聞く。強い意思を持たずとも、自動的にいろんなことをさせてもらえるということだ。最初の配属が合わない場合も次に部署異動を希望すればいいし、数年かけながら低いリスクで異動し続けることも可能。複数の部署から自社を見ることができるというシステムにはメリットも大きい。

③人的ネットワークが全く無駄にならない。
基本的にあまり人が動かない環境であれば、時間をかけて(時には無駄にしながら)構築した社内ネットワークが無駄にならない。しかも社外でも基本流動性がある程度限定的である環境であれば、同じことが言える。日本でLinkedIn利用者数が少ないのはそれが理由だろうか。私の場合、周囲で人が動きすぎるのでこのようなツールがないと正直誰がどこにいったかもはやトラッキングできない。せっかくあの会社とコネが出来たといっても、『え、もういないの?』となる始末。先方がお金を取る方(サービス提供者)の場合は引き継ぎがなされているが、逆の場合は引き継ぎも適当であり、最終日に『それではお元気で』とメールが来るだけだ。

欧米などファンクショナル・エクスパートとして自分のスキルを会社に提供する、という発想が中心の雇用市場においては、逆に大胆に動くことが後々不利にもなりかねない。最初何をしたかにその後大きく左右される。だからMBAを機にキャリアチェンジを目指す、というのも主導だが、最近ではキャリアチェンジの難しさについてもよく耳にする。

先ほど少しコメントしたが、私も米国時代に勤めていた会社が大幅にリストラを行った。そもそもグループレベルでは解雇は比較的日常茶飯事だったため、グループ内他社から来た私は『当然そうなっちゃいますよね』と正直そこまで驚かなかった。しかしこのグループ企業のみがこれまで一度も大規模リストラを行っていなかったため、社員3割が解雇の発表があった際はとても大変な騒ぎだった。(ちなみにそれは米国事業で、欧州事業も15%の社員削減。)

その際、セールスとマーケティングの社員が全員呼び出され、数人のマーケティングリーダーと私の上司の上司が現状について報告をした。他のリーダー2名は『いつか状況は好転する。Be courageous. bla bla bla』とその時の心境として最も聞きたくないことを話したが、ちょっとダニエル・クレイグっぽい私の上司の上司は次のように言った。

Listen, we all know this sucks. But go out there. Find a new position. That is the only way to survive this crisis. Go for something even if it is below your current position. The reality is that, when you are going through this type of crisis, you have to be ready to take a position for which you are overqualified. That's life. It may take you a few years to recover and get back even to where you stand know. But don't be afraid. Go acquire new skills. Challenge yourselves in a new environment. Learn about new industries. For those who live the coming two or three years as best as you can, I can assure you that you can come back as a more complete professional.

言うなら本当のことを言ってほしい、というのがその場にいた社員が思っていたことに違いない。会場の空気が少し変わった気がした。セットバックをどう生きるか。私にとってもこの正直なコメントはよくぞ本当のことを言ってくれた、ととても印象的だったので一生覚えておこうと思った。

でもセットバックばかりでは正直疲れる。安定だって悪くない。あとはそこで何を自分の命題としてやっていくか。劇薬を飲む前に、まずは今いる環境で何か出来ることはないかを考えてみてはどうか。自分で作れる変化はないか。

今日はもう水曜日。週末が見えてきた。今日も一日、がんばろう。


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【関連記事】

村山昇さんのブログより
『人財教育コンサルタントの職・仕事を思索するブログ
知平線の向こう ~明日の働く景色がみえてくる』

「転職」を考えるとき〈1〉~栄転と流転の分岐点は

「転職」を考えるとき〈2〉~現職を「卒業する・去る・逃げる」

「転職」を考えるとき〈3〉~転職のリスク

「転職」を考えるとき〈4〉~転職は会社への裏切りか

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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2012年11月5日月曜日

いい仕事に出会うために考えること

【今回のテーマ:いい仕事に出会うために考えること】

しばらく前にダウンロードしていたKnowledge@Whartonの記事『Why Good People Can't Get Jobs: Chasing after the 'Purple Squirrel'』(出典は参考リンク参照)という記事をコーヒーを飲みながら読んでいた。(余談だが、コーヒー好きの私には、朝のこの時間が至福の時。)

ペンシルバニア大学のビジネススクール、ワートン・スクールのPeter Cappelli教授が書いた『Why Good People Can't Get Jobs: The Skills Gap and What Companies Can Do About It』という本に関する記事だ。実際読んでいない本について語るのはいかがなものか、とは思いつつ、記事で紹介されている内容としては、以下のような内容である模様。

『多くの会社が「人を採用できない、スキルを持った人材がいない」と言っている。しかし、そもそも採用プロセスは会社側が握っており、空いたポジションと同じことを他の会社でやっていた人を見つけようとすること自体に無理がある。経験者ばかりを求める傾向があるが、経験は仕事をしないでは得ることができない。また多くの場合はスキルギャップではなくトレーニングギャップも大きな問題。』

比較的ジュニアの採用についての部分がもしかするとこのインタビューではピックアップされているかな、という印象を多少受けたので、全体のメッセージではないかもしれない。そこは本を読んで穴埋めするとしても、しかしこの記事に書かれていたことには全般的にはうなずけると思った。

例えば、大手企業である場合はよく社内公募も同時に行うことが多いので、ジョブスペックもすでにその分野のエキスパートである上、社内プロセスらしきことの熟知していることが条件として挙げられている場合も結構ある。それじゃあ外部の人間には難しいだろう。

とはいっても受ける側の準備という点で、私も採用する側として個人的に気になっていた点が2つある。(比較的若手の人が多いが、そうでもない人でも時々見られること。)

①意外にも面接しているポジションのジョブスペックを理解していない人が結構多い。
基本はジョブスペックを見るとだいたいのポジションイメージが出来るが、そうでもない人も多く面接に来る。スキルや経験面、あるいは今後取り組みたい関心分野と合致する場合、ジョブスペックを見ると『あ、6割が経験で対応可、4割は新たなチャレンジ』など、すでにやってきたことでカバーできる部分がだいたいどれぐらいか、というのは分かるはずだ。しかし驚くことに、ポジションタイトルだけで勝手に職務内容を決めつけている人も少なからずいる。

②これまた意外にも自分がやってきたことが、一般的にはどういう職務内容であるか言えない人がいる。
(私は基本マーケティング分野で働いてきたので必ずしも他部署でも同様のことが言えるかは分からないものの)人の履歴書を読んでいると、ポジションタイトルと職務内容の擦り合わせが案外といい加減な会社も多いんだなあ、感じる。
履歴書のポジションには違うタイトル(例えば『マーケットリサーチャー』)が書かれていても、職務内容的には『これって、プロダクトマネジャーということですよね?』というと、『あ、はい、そうです』と驚きつつも同意する人もいる。
実はこれも結構問題だと思う。自分がしてきたことが一般的には(自社以外では)なんと言うポジションであるかを知らない、あるいはうまく補足することで分かりやすく表現するなどの配慮がない、というのは、受け手からはプロ意識の欠如と取られてしまう。
もちろんタイトルの詐称やインフレーションというのは良くないが、逆に、タイトル的には何だかよく分からなくても、例えば『一般的に経営企画と呼ばれるポジションに近しい職務内容でした』と言うだけで、採用側はピンとくる。同様に、ひとつのポジションでも複数の機能をこなしている場合なども、このように○○が何割、△△が何割、と言うだけで分かりやすい。

少なくとも上記2つが理解できていなければ、どこまでを経験でカバーできて、どこからが『ポテンシャルの売り込み』となるかが最初の面接の場で双方にとって明確にならない。そこが明確にならなければ、企業側も『やめとくかな~』となる。不景気など、買い手市場である場合は確かに採用される側には厳しい状況であるのは間違いない。特に職場経験が浅い人たちの場合は『ポテンシャルの売り込み』の部分が大きいので、業界知識や必要なスキルをまずはどこまで『理解』しているか、という部分が重要。一見すると関連性のないことを、どうやって関連付けるか、意味付けを与えるか。『経験はないけど基礎力、理解力はあります』、そこをアピールすることになる。

加えて最近若手の人にアドバイスするのは、まずは『教育意欲が高い会社に入社する』こと。あと、『きちんとしているな』と感じる会社に入ること。正直、何の新しさも個性もないアドバイスだ(汗)。でもとても重要だと思う。OJTOJTと言う会社ではなく(運悪く見本になる人が少なかったら困る)、ちゃんとトレーニングバジェットがあるとか、プログラムがある企業がいい。規律正しい、クリーンな環境をまずは知ることは、もし起業したいと思うような人にもプラスになると思う。

特に海外で会社員をして行く人にはそこにこだわることが重要だと実は考えている。日本のように総合職が多い場合は、同じ時期に入社して、同期と呼ばれる人たちがいて、みんなで(最初は)仲良くスタートできる。上、下だけではなく横のつながりがあるというのは心強いし、重要な社内ネットワークでもある。ただ、海外市場では、基本ライファー(ひとつの企業でずっと働く人)を育てるという意識はない。だから自分自身で選んだ分野で戦って行くことになる。部署異動というのも確かに大手企業ではあるが、キャリアアップにどんどん転職していく場合、売りは自分のスキル。最近は私も自分のマインドセットを変えるため、自分自身を(会社勤めしたとしても)特定のスキルや経験を売るフリー・エージェントと考えるようにしている。その方が自分を『○○社の社員』と考えるより実は現実に近いからだ。

そして最初はスキルと経験を売って行くわけだが、30過ぎてマネジャーポジションになると、『しかも信用できる』という印象を与える必要がある。プロとしての意識、『しつけ』のようなものを早い段階で得ることが、将来的にどんどんフリー・エージェント化していく自分のキャリアの土台となる。その後は、それぞれが与えられた機会にかぶりついて、得られるものをすべて吸収していこう、と土臭く思えるか。もう知っている、やったことがある、と思う分野でも、そこに『価値』『意味』を見つけられるかが多分吸収率につながるのだろうと感じている。

もちろん、上記のことは海外市場で限ったことではないが、海外で、しかも日系ではなくローカル企業(日本で言う外資)で働こうとするのであれば、かなりの独立心が前提とされることは間違いない。

なんだか話がずれて、『Why Good People Can't Get Jobs』ではなくて、『Why People Can't Get Good Jobs』になってきたが、『自己ブランディング』などのテクニックに関する情報や記事が多い中で、『自分の立ち位置を理解する』『スキルだけではなく人間力を磨く』ということもいい仕事に出会って行くには合わせて重要だな、と最近強く感じている次第。



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【関連記事】
Why Good People Can't Get Jobs: Chasing after the 'Purple Squirrel'
(June 20, 2012; Knowledge@Wharton)

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発行元:Analyze + Summarize
Copyright(C)Analyze + Summarize
無断での転記引用はお断りしています。

2012年10月16日火曜日

ミャンマー:Long Reliant on China, Myanmar now turn to Japan


Long Reliant on China, Myanmar Now Turns to Japan

記事の紹介
タイトル:Long Reliant on China, Myanmar Now Turns to Japan
出典:New York Times (October 10, 2012)
原文:英語
リンク:


(あくまでもこの記事だけを読んでも理解できるよう、内容を簡単にまとめたものである点、ご了承ください。一語一句正確に知りたい方は是非原文にチャレンジしてください!)


ヤンゴン市内中心部にて、後にピューリッツァー賞を受賞することとなった写真に長井健司氏の最後は納められた。ミャンマーの軍事政権の残酷さを物語る写真だ。長井氏は日本人のジャーナリストで、5年前(ミャンマーの反政府デモを取材中)反政府運動を沈静化しようとする軍に射殺された。この事件は、ミャンマーと日本の関係をこれまでになく悪化させることとなった。

しかし現在では、日本は政府による協力な後押しと民間企業による投資を拡大、過去の独裁主義イメージを払拭したいミャンマーにおいて一気にプレゼンスを高めている。これまでの中国の独占的立場を脅かすまでに至っている。

長井氏が殺害された場所からほんの少し離れた場所にある市役所の4回では、日本のエンジニアが首都ヤンゴン市内の道路、通信網、上下水道整備の建設プランを作成している。

「ミャンマーは復興に力を貸してほしいと言って来ている」、と在ミャンマー日本大使館の丸山市郎公使は話している。ミャンマーのテイン・セイン大統領は東京に赴き、国の再開発の主要プロジェクトを日本に委託することを選んだ。ヤンゴン市の復興に加え、日系企業のコンソーシアムはティラワ経済特区開発および郊外には衛星都市の開発も受注している。

「正直、日本の関与の規模に加え、日本がここまで敏速に対応したことに驚いている」とミャンマー経済に詳しいオーストラリアのマッコーリー大学シドニー校のSean Turnell教授はコメントしている。ミャンマーは、最大の投資元である中国一辺倒から方針を変更し、日本を重要プロジェクトに起用しはじめ、ミャンマーは中国と日本というアジア二大経済大国によるアジア域内でのプレゼンスと影響力拡大に向けた競争の場となっている、とTurnell教授は言う。

中国と日本のミャンマーにおける投資戦略は異なる。日本はミャンマーの低賃金の労働力確保を狙い、タイおよびベトナム、カンボジアのインドシナエリアに加え、ミャンマーにおける工場の増設を狙っている。一方、中国はミャンマーでの天然ガス、宝石類、材木、ゴムなどの天然資源に加え、ダム建設による水力エネルギー確保に目を付けている。しかし中国が資源を搾取しているという印象が反中国の動きは、Monywa銅鉱山でのストライキや昨年のミッソンダム建設の中止などという形で表れている。

マレーシアのCIMB Asean Research Institute(CARI)の最高責任者、John Pang氏は、ミャンマーの日本へのシフトを次のように見ている。「日本に魅力を感じているというよりも、中国への反感が理由。中国自身もこの競争を手放した。ミャンマー政府は日本は脅威と見られておらず、両国政府トップ間も信頼関係を構築することができた。」

アジア他国もミャンマーとの関係改善とビジネス関係強化に動いている。韓国企業やシンガポール企業も同様にミャンマーで活発に動いている。しかし日本のアプローチが最も包括的だ。「過去20年ほど例をみない規模のプロジェクトだ」とプロジェクトに融資するJICAミャンマー事務所長の田中雅彦氏は語っている。日本政府によるミャンマーへの融資は利子1%以下で最初の10年は返済不要、返済期間も50年と、ほとんど寄付に近い内容だ。

当然ながらテイン・セイン大統領はこのチープマネーは魅力的であったはずだが、それよりも他のことに目を向けている。それは2015年の再選だ。銀行、学校、病院やその他施設を含むティラワ経済特区開発を「大統領は2015年までに終了してほしいと要請している」と丸山氏は言い、冗談を含めてこのタイムラインを「ミッション・インポッシブル」と言う。日本財団の笹川陽平氏はミャンマーの貧しい少数民族居住エリアを中心に援助を行っているが、「国民全員が軍事政権からの民主化への移行による恩恵を期待している」とする。テイン・セイン大統領は同様に日本財団に対しても過疎地における学校建設などを含む同財団受注分のプロジェクトの早期終了を希望しているという。

ヤンゴン市内では、日本の影響力の増加を見て取れる。市内のビルボードにはキャノンカメラの広告が見られ、また日本航空、全日空はミャンマーへの直行便を12年ぶりに再開した。

市内のインフラ整備は1948年までの英国統治時代に行われたものだ。老朽化した鉄道網の上を英国製の電車が走っている。ヤンゴン市内の歩道は隙間があって油断ができない。荒廃した上下水道施設は中心部のみに敷設されており、パイプからは水漏れしている状況だ。町の外れには貯水池があり、魚、枝葉やゴミが挿入しないよう竹でできた濾過システムが施されている。

日本政府はヤンゴンの港の波止場6カ所に加え、公共交通機関、発電所の再開、バゴー川の2本目の橋の建築を計画している。
フィージビリティ・スタディが年末頃までに終了した際、おおよその建設費用計算ができるとしているが、10億ドル規模のプロジェクトになる模様だ。その他、日本政府はすでにミャンマーへの延滞債務帳消しあるいは返却期間見直しを発表している。

ミャンマーが地理的に戦略的重要性を持つことは確かだが、日本とミャンマーの歴史的関係も背景も注目を浴びる理由のひとつに挙げられる。第二次世界大戦中の日本軍によるビルマ占領は残酷なものだった。しかし英国からの独立の際のリーダーであったアウンサン(アウンサンスーチーの父親)は日本で訓練を受けたという経緯もある。ミャンマーと日本は、現在の米国とベトナムのように、敵対から友好関係へと関係改善に至った。

日本財団の笹川氏にとっては、ミャンマー復興に携わることには個人的な意味も感じている。戦後、ビルマからの輸入米を食べていたことを覚えている氏は、遅ればせながらミャンマーの日本復興に対する協力への恩返しをしたいと考えているという。

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【関連ニュース記事、ビデオなど】

●急接近する日本とミャンマー、投資加速の舞台裏(ロイター通信、2012年10月5日付)

●ミャンマーで大型インフラ事業拡大 丸紅社長が会見(日経新聞、2012年10月12日付)

●クローズアップ2012:ミャンマーの延滞債務解消 日本企業進出加速へ(毎日新聞、2012年10月12日付)

●進藤隆富の取材後記:経済沸騰!いざミャンマーへ(テレビ東京 2012年10月13日)
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【ここからがA+Sのコメント!】 

最近ミャンマーへの関心が世界中から高まっている。日本人だけではなく欧米人の口からもミャンマーへの関心について話を聞く機会が増えてきた。

そこで私も不勉強を解消すべく、ミャンマー関連の記事を読みはじめたが、日本と海外の記事で気になる点がひとつあった。日本の報道では両国の友好的関係がベースとなり、ミャンマーでのプレゼンスが一気に上がっているという内容が多い。しかし海外の報道を見ると、確かに日本の影響力は高まっている、しかしそれを競争的脅威と感じている国はあまりない、という内容。ひとえに中国による影響の牽制と見るものが中心。

ロイター通信の記事にはグラフがあり、20126月時点でミャンマーへの出資額が最も多い国のランキングは以下の通り。
①中国(約120億ドル)
②タイ(約90億ドル)
③香港(約60億ドル)
④韓国(約30億ドル)
⑤英国(約30億ドル)
⑥シンガポール(約20億ドル)
⑦マレーシア(約10億ドル)
⑧フランス(約5億ドル)
⑨米国(約3億ドル)
⑩インドネシア(約3億ドル)
⑪オランダ(約3億ドル)
⑫日本(約2.2億ドル)
の順となっている。
数字は明記されていなかったのでグラフからおおまかに読み取った。)

今回の日系コンソーシアムの投資および債務帳消しなどの総額は総額180億ドル規模に上ると報道されていたため、確かに日本のプレゼンスは大幅に高まったと言えるが、現時点では欧米諸国は経済制裁をしながらも日本よりも投資額を上回っており、これから急ピッチで投資額増加を行ってくると見られている。

市場参入の狙いも中国と日本は異なる。アフリカ市場同様に、資源確保を軸としている中国に対し、日本は低賃金での雇用を主な軸としている。そのため、中国がミャンマー市場内での競争相手を日本ではなく自国同様に資源確保を目指す他国と見ている可能性も高い。

いずれにしても、これからミャンマーがホットになることは間違いないため、今後も動向を追いかけていきたい。シンガポールからもローコストエアラインが運航していることだし、個人的にも近々是非訪れてみたい国のひとつでもある。



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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2012年9月30日日曜日

Spreading its wings : One of Asia's most successful carriers keeps on expanding


Spreading its wings : One of Asia's most successful carriers keeps on expanding

記事の紹介
タイトル:Spreading its wings : One of Asia's most successful carriers keeps on expanding
出典:Economist (29 September 2012)
原文:英語


(あくまでもこの記事だけを読んでも理解できるよう、内容を簡単にまとめたものである点、ご了承ください。一語一句正確に知りたい方は是非原文にチャレンジしてください!)

マレーシア航空、カンタス航空などアジア大手航空会社は経営が悪化しているのに対し、アジア発のローコストエアラインであるAirAsiaはたったの10年でアジアの空で大きく羽を広げている。昨年のみでも3000万人の顧客が同社フライトに搭乗し、利用者数も年間10%成長し続けている。利益率も上々だ。中国国内市場には参入していないものの、同社は自社をアジア4位キャリアと位置づけている。

本社は現在もマレーシアだが、今後、ジャカルタオフィスは東南アジアでの事業拡大において、重要な位置を占めることとなるだろう。東南アジアは6億人の人口を抱え、地理的には離島が多い。他地域でのように、交通道路や高速列車などの他の主要交通手段による競合は限定的であり、航空会社にはまさに魅力的な市場と言える。

AirAsiaはローカルエアラインBatavia Air買収(※現在も規制当局による承認待ち)によりインドネシア市場に参入。好調な経済、ミドルクラスの拡大、2億4000万人の人口は1万7000の島々に分散していることなど、インドネシア市場のポテンシャルは明瞭だ。Batavia Air保有分の32機に加え、新たに18機をインドネシア便向けに投入予定。全日空との提携により日本市場にもローカル線で参入したばかりだ。次は韓国参入と思われる。AirAsiaはすでにエアバス社の大手顧客でもあり、同社のA320および375を導入。追加で100機オーダーを出す予定。

AirAsiaは他のインカンバントオペレータよりもチケット価格は安いものの、欧州のローコストキャリアのように破格というほどではない。アジアユーザーは多少お金を払ってでもクオリティの高いサービスを期待するため、フライトアテンダントはしっかりとしたトレーニングを受けている。出発時刻がずれることもまれだ。

東南アジア市場においても、将来的にはTiger AirwaysやJetstar Asia(いずれもシンガポール系)、Cebu Pacific(フィリピン系)、Lion Air(インドネシア)など、他のアジア系ローコストキャリアとの競争が激化すると予想される。規制環境も厳しく、政府主導で大型空港の設立が行われてきたため空港税も高い(通常、AirAsiaチケット価格の約15%に相当する額が空港税として追加されてしまう)。今後、利用価格の低い空港が増加するかどうかが成長の鍵となる。

また、タイ、マレーシア、シンガポールは国内市場の規制緩和を実施しているが、他市場では現在も規制が厳しく、ローカル線の運行本数の制限など、事業拡大への環境が整っているとは言いがたい。またリベラルと言われているシンガポールにおいてもAirAsiaはオペレーションライセンス取得には至っていない。

また、ロンドン、パリとアジアを結ぶ長距離路線は収益性が見合わず運航中止となった。昨今のガソリン価格の上昇が主な原因であるものの、欧州の二酸化炭素に対する課税も重くのしかかる。

しかしアジアにはインドのような事業機会もある。人口全体、またミドルクラスの規模もインドネシアを大きく上回る上、インド政府も航空事業分野を外資にも解放すると発表。外資規制は49%と存在するものの、非常に魅力的な市場であるとAirAsiaのCEO、フェルナンデス氏は語っている。しかし、急いで参入するよりも、現時点ではローカルキャリアが競争により疲弊するのを待ってからの参入を検討しているようだ。


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【ここからがA+Sのコメント!】 

この夏、3週間で東南アジア3カ国6都市を旅行した際、AirAsiaにはずいぶんお世話になった。東南アジアでの移動の場合は1~2時間程度のフライトが中心。チケットも安価で購入できるが、欧州のローコストキャリア利用の際よりもスムーズである印象が強い。 また欧州ほどローコスト向けの空港が多くないため、たいていの場合はインカンバントキャリアと同じ空港に乗り入れていることも「スムーズ」と思える理由かもしれない。加えて文化的な要素も含まれると思うが、欧州のEasyJetなどに比べてフライトアテンダントのサービスが丁寧だ。はっきりいって、欧州のインカンバントキャリアのサービスなんかよりずっといい。

AirAsiaの受け売りとなってしまうが、欧州のローコストキャリアのシェアは約31%、対し東南アジアでは22.7%という。今では西はクアラルンプールからイランのテヘランにも運航している。インドネシア市場参入後は、メッカへの巡礼者を意識し、サウジアラビアまで羽を広げるのだろうか?(いや、サウジ側の規制体制により不可能なのだろうか?)

AirAsiaは女性の雇用にも積極的であるようで、機内誌にも女性のトップを紹介している記事が掲載されていた。マレーシア事業のトップ(+ボードメンバー)、フィリピン支社のトップは女性であるという。その他、マーケティングなどの主要ポジションにも女性が高いポジションを占めているようだ。
AirAsiaのタグラインは「Now Everyone Can Fly.」しかし東南アジア社会に移動手段を提供しているだけではなく、アジア発の成長企業のひとつとして、今後も多方面でのソーシャルインパクトが注目される企業であることは間違いない。とはいっても航空業界の競争は厳しい。アジアにはインカンバントキャリアに加え多数のローコストキャリアが存在する。今後どのような戦略で事業拡大を押し進めるかは要注目。

毎回記事レビューとコメントを書きながら、最もベーシックな市場調査であるマーケットインテリジェンスも疑問の宝庫で本当に面白いと思う。


【関連ウェブサイト】
AirAsia: ルートマップ

AirAsia: What is low cost? 


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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。