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2013年10月17日木曜日

一周年、おめでとう。

よくよく考えると、ブログを開始してから一年が立った。ぼーっとしていたら祝い遅れてしまった。イカン、イカン。9月1日だったのに〜。

以前は『Analyze + Summarize』という名前でやっていたのを、今年秋に『住人十色』にアップデート。同じようなことを書いていくつもりだが、タイトルチェンジで心機一転。以前よりも広がりというか曖昧なタイトルなので、分析やコメントを書かないでいい楽さが心地よい。自分の首を絞めすぎるのはよくない。

…と、半年ほど休んで起きながらも白々しくまた開始する自分の横着さに呆れながらも、ノラリクラリでも続けることに意義がある、というのが趣旨ということで許していただきたい。優しいリーダーばかりで良かった。

しかしあっという間にもう10月。こんなに早く一年が過ぎるなんて、そりゃあドンドン年取るわけだ。

そろそろ今年もお決まりの手帳移行の儀式…。うひひ。

…なはずなのだが、実は今年はすでに8月に移行済み。

というのは、最近は無印良品でも学生向け(?)に8月から9月までの手帳が出ている。正直1月スタートが気持ちはいいものの、仕事の関係で結構来年の4月ぐらいまでは予定を決めていかなくてはならないため、別の手帳を持ち歩くのが面倒くさい。それで結局早めの移行。

(ちなみに、現在カッコいい3年手帳を探し中。持っているだけで仕事が出来ると思われそうなアイテム、求む。あと、『ここの会社は確実に同じ手帳を売り続ける』というものならなお良し。こうなればモノにも頼って何が悪い?!開き直りの私にオススメがある人はぜひ連絡ください。)

今回移行したのは、以下。

●『カビの生えた成功体験は捨てる。』
これは2011年からの持ち込し。もはやこれはカビが生えるまで持ち込したい。

『腹をくくれ!!』
Exit strategyではなくCommitment strategyを持とう。逃げ腰はイカン!

『白でもない、黒でもない、グレーを許容しよう』
Ambiguity toleranceを高めましょう。まあそんなに急いで価値判断しないで。

そう、この『急いで価値判断しない』、というのは実は相当重要だと思う。国際人になりたいなんて難しそうな目標を持つよりも、この適当力(別称:まいっか力)を高めることの方がはるかに応用性が高い。

なんて、また脱線して熱くなってきたのでもう少し言うと、『どうやったら子供を国際人に育てられるか』なんて難しいことを考えるとのはやめにしよう。そんなこと、10数年海外に住んでるんだからって聞かれても答えられない。子供に何をしてあげられるかではなくて、親としてまいっか力を高める方が根が明るいまいっか力が高い子供を育てられて、彼らはきっといろんな意味で違いに許容力の高い大人になるに違いない…。

(…ということが正しいかは不安があるので、これからは海外で活躍されている方にもいろいろとお話を聞いて確認します。)

(ちなみに、まいっか力は決して鈍感力と同意語ではないのでお間違えなきよう。)

今年の移行からも、2013年の10ヶ月もいろいろ悩ましい一年であったことを分かっていただけると思う。ガンバレ、ワタシ。

2013年10月2日水曜日

ファッション雑誌からの脱線:『Otherness』について考える。

今日、かなり久しぶりにファッション雑誌を購入。いつもは仕事上ビジネスマガジンや科学系の雑誌を読む事が多いので、広告を買っているような雑誌はいかがなものかと思う一方で、まあまあ時にはね、こうオシャレなものを見た方がいいんじゃない?ということで、分厚いのを3冊とりあえず購入。

そもそも今時誰が紙版の雑誌を購入するんだ…とは思いつつも、結構ヘビーな雑誌たちをドサッとソファーに投げ、PukkaのAfter Dinnerハーブティーを作り、お気に入りのBodumの保温マグカップに入れて飲む。

ペラ。ペラペラ。

まずはBazaarの2013年10月号から。今月号は『The Beauty Issue』とのこと。ビューティーからほど遠くなっている私にぴったりではなかろうか。ふむふむ。別冊子になっている『Bazaar Beauty Hot 100』。

Best 1は『Creme de la Mer』のThe Moisturizing Soft Cream。ザ・モイスチャライザーですな。

ちょっと気になったのは、RODINの『olio lusso』。最近顔がカサつくんです。これも加齢ってやつか。あとは雑誌に挟まっていた高級デパートLibertyの別冊の広告雑誌にあったMario Badescu Skin Careの『Drying Lotion』。もともと甘いものは苦手だったのが、最近時々チョコレートを食べるようになると、なんと年甲斐もなくニキビが出来るようになってしまい、ついでに仕事が忙しくなるとあごニキビ!『こいつらを寝ている間に本当にやっつけてくれるのであれば安い買い物なはず』と熱い眼差しを向けてしまう。

嬉しいことに、いくつか私も良しとするものがあったが、その中でも高得点だったのは『Aqua di Parma』の香水『Aqua Nobile』が取り上げられていたこと。3種類あるユニセックスのもので、香水好きの人にはどれもオススメ。街中で香りがすると思わず振り返るほど好きです。

などなど、まあそんな感じで写真が多いものをわざわざ価格まで確認しながら舐めるように読みすすめる。でも活字好きの私には、ファッション雑誌なんて大して読むところないよなー、なんて思いながらも本誌の記事もちゃんと読んでいると、ある記事にこんな表現があった。

『The power for otherness』。

Othernessとは要するにother/differentであるということ、という意味。

ファッションは流行を取り入れることこそ正しいような印象があるが、もともとはOthernessを求める、人と違う格好を取り入れる(シャネルのスタイル、プラダのバックパックなど)ことこそがファッションの原点なんだ、という内容の記事だったが、でもこの記事自体よりも、この『Otherness』という言葉が何だかとても心に残った。

当然英語としては意味が分かるが、ふと、そういえば日本語では何というんだろうと思い、調べてみた。でも『違っていること、異なっていること』ということしか出てこず、しっくりした名詞がない。

そこから少し話がずれて、じゃあ『Togetherness』(togetherであること)ってなんだろう?と思うと、『連帯感』『一体感』という日本語がある。じゃあ『Twosome(twoであること)』は?となると、『2人組』っていうちゃんとした日本語がある。

この『Otherness』という言葉だけがしっくりした日本語が出てこないのが、何となく日本であるような気もした。多分日本ではそれを『外』という漢字で表現していたのかな。『外部の人間が、、、』とか『外人』とか。『内』と『外』という対比で、『自』『他』とは違うレベルの比較。『自』も『他』と近しい立ち位置で『内』入りを目指す、それが日本的な発想か。

もう少し脱線して、『Belonging』も調べてみた。『belongしている』という意味の日本語が好きそうなこの言葉には『帰属』という固い訳が出てきた。

でも、そこには『安心できる関係で感じる幸福』というまさにビンゴ!な訳もちゃんと記されていた。『内』の中にも『Other』がある、そんな海外生活の中で時折感じる『belonging』を、『幸福』という名詞で汲み取ってくれたことに、なんだかホッとした。

はあ、これで安心して後の2冊もじっくり読める♬

2013年2月12日火曜日

個として飛び出すグローバル (2013/02/12):【渡航後】【キャリア】『at will』契約


【今回のテーマ:At Will契約について考える】

国によって異なるが、海外市場で働く際に心構えとして持っておくといいのが、就職は『at will』契約であるということ。

日本では、まだまだ転職のリスクが高いと考える人も多い上、最初から転職を念頭においている人は少ないようだ。ビジネス系雑誌でも例えば『ローカルスタッフはすぐ転職する』とため息をつく日本人駐在員、というような記載があったりするが、それも日本での会社への忠誠心という考え方から来ているのだと思う。

決してそれが悪いとは言うつもりはない(その点は以前も記事に書いた)が、一般的に海外市場では事情が異なる。基本はお互い満足している間だけ雇用関係が成立する、という『at will』契約が中心だ。(※『at will』契約については検索すればたくさんコメントがあるので、ここでは省略させていただく。)

そう聞くと、雇用される側に不利なように聞こえるかもしれない。確かに雇われる側が守られているかどうかとどちらとも言えない。(とはいっても一般的に育てた社員を解雇して新しい社員を育て直すことはロスが大きいので、企業が解雇を振りかざして社員を脅す、というようなことは無い。そういうことはパワハラなどで違法となる国がほとんどだ。)

ただ、だから、自分のスキルはいかほどかを常に意識することが重要になる。一生同じ会社で働くことが前提ではないので、いつかは自分で次を探して行くことになるからだ。

そうである場合の心構えとして考えておきたいことは、例えば以下のようなことだ。

1)自分は汎用性があるスキルを身につけているか?
各企業に独特の仕事のやり方があるのは当然だ。ただ、例えば自分がしていることは他社にも存在する職務内容か、やっていることの中で何が汎用性が高いことか、などをしっかり見極めることが重要だ。仕事のアサインメントにおいても、引き受ける際のタスクの価値判断のひとつとして、この点を押さえておきたい。

2)ポジションタイトルは、外部から見て分かりやすい内容か?実際の職務と一致しているか?
転職することを前提でいると、他社や人材コンサルタントなどから見ても分かりやすいポジションタイトルの方がヘッドハンティングの可能性が高い。もっと言えば、マネジャーポジション以降は一定の経験があると見なされるため、仕事の声がかかり始める。だからポジションタイトルは重要だ。一人でも自分の下で働くスタッフがいれば、マネジャーやリーダーなどというポジションをリクエストすべきだ。また、社内だけで通用するような、日本に多い『営業一課』のようなタイトルは最悪だ。一課の意味するところが外部には分からない。あるいは、社内でのみ通用するポジション名は分かりにくい。自分のタイトルがそのような不明瞭なものではないか、そして実際やっている職務内容と一致しているかは契約書をサインする際、また職務内容が変わる時に人事担当と擦り合わせをする必要がある。

3)自分はファンクショナルスペシャリストなのか、あるいはジェネラルマネジャーを目指すのか。
日本では係長、課長、部長、本部長、などというように、ジェネラルマネジメントのポジションが中心だが、海外では専門分野で活躍を目指し、マネジメントとは別のルートであるファンクショナルスペシャリストという考え方がある。とはいっても上に行けば部下もいるし、人や組織の管理はあるので、マネジメントを放棄しているというわけではない。ただ、専門性を売りにするのであれば、その分野に直結する知識や経験が重視される。だからブレないキャリアの方が好まれる。あるいは価値の高いブレであることを意識する必要がある。同様に、ジェネラルマネジャーを目指すのであれば人やタスクの取りまとめをする役割に積極的に手を上げるとか、早いところマネジャーというタイトルを獲得することが重要だ。

『at will』契約は必ずしも不利ではない。契約が自分に見合わないと感じた時に、契約の交渉が出来るからだ。会社が必要な人材と見なせば、多少なりとも条件の改善が期待できる。ただ、すべてを年俸としての金銭的な見返りではなく、例えばもっとトレーニングを受ける機会を与えてもらう、産業コンフェレンスに参加させてもらい人脈を築くなど、総括的に人材としての価値が高まるものを交渉するのも手だ。

一方でドライな関係であると言えばそうでもある。周りには『私はこれだけしかしないよ』という態度の人も多い。そのような中で、自分自身はどう考えるのか。周りと同じように『これだけしかしません派』になるのか、会社の目標に照らし合わせながらも自分自身でも目標を持ち、自己実現を目指すか。『流されない』生き方は職場でも大事だ。

私はこれを選択する。

『ぶれない生き方』などという表現があるが、一歩一歩、『I choose to ….』という表現で考えていくと分かりやすいかもしれない。私もやっと最近になり大人としての知恵が付き、迷いが生じると『自分は何を選ぶのか?』と意識するようにしはじめた。結局はそういうことなんじゃないかな。



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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2013年1月6日日曜日

個として飛び出すグローバル (2012/01/06):【渡航前】【心構え】飛び出すか迷っているときに


【今回のテーマ:飛び出すか迷っているときに】

こういう質問を受けることがある。『海外に行くか迷っています。どう思いますか?』

そういう言われると、結構回答に迷う。

本当は『迷うぐらいなら辞めた方がいいです』と言いたい。日本はまだまだレールを重んじるところがあり、一度離れると軌道修正がしにくい国だ。迷った挙げ句レールを外れて、やっぱり後悔して戻る、となると、また二重に損する感じがする。女性であれば、30代以降は就職も厳しくなり、なかなか正社員がない、と聞く。そんな状況で外に飛び出すのであれば、もう戻れないという強い覚悟がなければ難しい。

でも一方で、『いや~、いろんなところに住むっていうのも面白いですよ~』と言って後押ししてあげたい自分もいる。そういう道を選んだ自分も、そこまでの意気込みで海外に来た訳ではなく、何だかそういうふうに人生が流れてしまった、という方が現実に近い。すべて計画通りには行かないのも人生。波瀾万丈とは言わずとも、結構日常的にスリルが多いことも確か。

だから、わざと少し論点をずらして、『体力的に自信がありますか?』と聞くことにしている。

そうすると、必ず、『え??体力ですか?』と言われる。
『それ、文脈的におかしいだろう』、『何たぶらかしてるんだよ』という相手の心の声が聞こえてくる。

困惑する相手に対しいつも言っているのがこれ。『いやね、海外で一人でやっていくって、結構馬力がいるんですよね。』

そう言っても大抵すぐはレスポンスがないので、そこからは好き勝手話し始めるとする。

そもそも、普通に考えて日本人が自国・日本で会社勤めをするだけでも毎日結構大変だと思う。(この点をあまり認識していない若者からも相談されることが有る故、まずはそこからスタート。)それをわざわざ他国でやろうと思うと、行き着くところは精神力、体力勝負と言っても過言ではない。海外でピンで活路を拓いて行くには、『石の上にも3年』というか、最初の数年が鍵となる。周りを見ていると、厳しい3年を頑張り抜けた人は大抵その後余裕で居残る。

だから、どこから手をつけたらいいか分からない、という人には、『とりあえず毎日腕立て伏せ30回やることから初めてはいかがでしょうか?』という。そうすると笑われる。でも『その30回を半年続けることができたら、ひとまずやる気という意味ではパスしたと自分に言ってあげていいと思う。しかも実際に体力(腕力)もつくわけだし、得した気分になってほしい。』と言う。

どこから手につけていいか分からないのなら、少し具体化するお手伝いをするという意味でそう言うが、そうするとほとんどの人が自主的に何かしら行動を起こし、『準備として○○を始めてみました』と言ってくるようになる。そうやって多分イメージが少しづつ沸き、話に現実味を帯びてくる。

ほんの少し背中を押すだけでこんなに変わるのだな、と思いながらも、逆に辛いのが、一人で飛び立った後、最初から現地でそういう風に支えてくれる人が必ずしもいるわけでもないという点。つい親心のように心配してしまったりもする。

とはいっても、別に毎日が辛く悲しいわけではない。というよりも、通常は楽しい日や普通の日の方が圧倒的に多い。ただ苦しくなってきたときに自分を救えるのは自分の精神力だけだ。

そんなこと、海外にいなくたって同じだ、と思われるかもしれない。いやいや、でも周りにサポートシステムがない場合は結構辛いんですよ。グッと来るんです、痛みが。しかも、例えばヨーロッパのように、昼が短く曇りがちの冬に、周りには何でも話せる友達もおらず、セントラルヒーティングは故障して寒いし、ボイラーは不具合を起こしている、という状況(※こういう環境的不具合、よくあります)。そんな中、『今は○○だけど、自分には乗り越えられるに違いない』と、自信を振り起こして前進していかなくてはいけない。トンネルの先には光が見える(…気がする)、と信じていくしかないのだ。

…と、想像するだけで多少暗い気持ちになってしまう。

ただ、辛いときに真面目に自分にムチを打つ必要は全くないと思う。必要なのは、そういう中でも、『ま、いいか~♩』と適当にやり過ごすことが出来る力。

ん?それって『力』と呼ぶものなのか?

はい。敢えてそれは力だと呼びたい。
…と言い切りつつ、一瞬『力ってそもそも何さ?』と不安がよぎったので辞書で調べてみた。

力とは、『何かをするとき、また、動かすとき、それを可能にする働きを生み出すもの』だという。

なるほど。『それを可能にする働きを生み出す』、か。適当にやり過ごすことを可能にする働きを生み出す、というと、何が何だか分からないが、精神的な凹みを乗り切るエンジンと考えれば、それも力なのだろうか。

まあ、迷っているならば、とにかくゼロからイチに何かを動かし始めるといい。それが毎日腕立て伏せでもいいのではないか。ただ、決めたリズムで継続することが大事。たとえ目標とかけ離れているように見えても、機動力をつけることは人生においてもプラスになる。そういうわけで、これからもクサいことやカッコいいことは言わずに、多少トンチンカンでもこのようなアドバイスを私はしていこうと思う。


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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2012年11月26日月曜日

一足先に2013年に移行


【今回のテーマ:一足先に2013年に移行】


来週から11月も最終週。そうなったときに必ずすることがある。

それは、次の年の手帳への移行。

私は文房具が好きなので、『好きな文房具しか使わない』と決めている。そうしないと大事にしないからだ。とはいっても別に高価でスタイリッシュなものという意味ではなく、デザインがシンプルで使いやすいと思うものを選択するようにしている。使いやすそうだなと思うとつい買ってしまうが、まあそれぐらいはいいか、ということで。

手帳もかなりいろいろ探したし、最近は日本でもいろんな方がプロデュースした手帳があるが、海外にいるとなかなか細やかな配慮があるものがない。Moleskineなども使ったが、ここ数年ほどは最終的に仕事もプライベートも無印良品のものに落ち着き、Moleskineは1日1ページのものに日記を書いている。2013年も、2012年と全く同じスタイルのものを選んだ。ただ仕事用で使っていたものは去年と全く同じデザインがなく、しょうがなく少し小さいサイズを購入となった。毎年同じスタイルのものをずっと使える点も無印良品が好きな理由でもある。

ただ、売り切れになると嫌なので、10月ごろからMUJIショップをうろつき、見つけるとさっさと買う。11月は早く月末になって次の年の手帳に移れないかな~と心待ちにしている。ほとんどの手帳が前年の12月から準備されているわけだし、早く新しいノートに何か書きたいという幼稚な思いもあり、この手帳の移行が11月最終週の儀式となっている。

特に偉そうに話すほどの手帳術はないが、基本的に用事は月全体のページに書き込む。私が使っている手帳の場合は、毎週のページも見開きであるが、左側が一日ごとに書くスペースが設けられており、右側がフリースペースとなっている。なので右側のページに思いついたことや年間通して考えたいことなどが書かれている。基本は左側の週ページには特に書かない。あとで関連事項を書き足すスペースが欲しいからだ。だから週の予定用としてはあまり機能していないが、見開きの月ページと残りはただのノート、という組み合わせがないようなので、仕方なく(?)こうしている。バインダーに中身を差し替えるタイプの手帳も学生時代使ったが、リングのところが破れたりするのが面倒。そういうわけでこれが一番いい。

さて、昨年の11月末にまず書き込んだことは何か、というと、これ。
『人が習慣を作り、習慣が人を作る。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。』

うむ、結構いい言葉だ。

毎年その年の抱負を決めるのだが、2012年は『今年の抱負』とは書いておらず、この文章を最初のページに書いた。残念ながらどこから引用したかはメモしていないのがおっちょこちょいで使えないところだが、何かを読んでいていいなあと思って2011年の手帳にメモを取った覚えがある。20102012年は忍耐のサイクルなのだなあ、というのが2011年時点で見えていたので、2012年もいつかトンネルを抜けるときのためと考えよう、という自分なりの思いが込められている。こうやって前年最も重要と思ったことは次の年の手帳にも持ち込んでいる。

その他のメモはこのような内容。
・ヒューマンスキル(対人関係能力)として気をつけたい点(←そういやあ前職で上司と対立してたっけ…)
・中期人生戦略、やりたい仕事像(←上記の理由で早く次の職場探そうって思っていたため)
・生業と『良い子、悪い子』(←これは先日記事で紹介したこと)
・会ってみたい人リスト(←世の中いろんな人や仕事があることを実感するため)
・MESE(Mutually exclusive, collectively exhaustive)ー分析の際に心がけること(←アナリストの仕事をしていたため)
・論理パターン(並列型、解説型、ふたつの組み合わせ)(←チームや自分の仕事をリビューする際に論理的に話が流れているかを確認するために意識しようと思ってメモをした)
・マクロビについて(←食生活を振り返っていた際友達に勧められて少し情報収集)
・行きたい国、都市のリスト(←東南アジアへ移動することが分かったため)
・シンガポールに住み働くための豆知識(←シンガポールに引っ越してきてすぐ受けた講習)
・読みたい本のリスト(←新分野を知る必要ができたため)
・A+Sで書いたこと、書きたいこと(←やっと9月1日から活動開始に至る前のことなど)
・『個として飛び出すグローバル』企画(←2013年は忙しくなりそうなので早めに考えをまとめておこうと思ったため)
など。

もうひとつ、やりたい仕事像関連でメモしたもので、結構気に入っているものをご紹介。(これも出典は不明瞭だが、どこかからひっぱってきたもの。少し言葉を変えているかもしれない。)
ーーー
『会社で必要とされるには』

①カビの生えた成功体験は捨てる。
②現場の変化を素早く察知する。
③『現象』から『事実』を見極める。
④ひとつだけ飛び抜けた強みを持つ。
⑤ニーズを絞りこみ、得意分野としてレベルアップする。
⑥複数の先行目標を持つ。
⑦基本に忠実でいる。
⑧自分から提案して小さな成功体験を作る。
⑨煙たがられてもいいから信念や意見を持つ。
⑩テーマを決めて学習し続ける。
ーーー

この中で特に好きなのは、『カビの生えた成功体験は捨てる』と『基本に忠実でいる』『煙たがられてもいいから信念や意見を持つ』の3点。(この『カビの生えた』という古くて嫌な感じの表現が特にいい。)実は結構これは意識しないとダメな点だと思う。①を押さえると、後がついてくる。⑦と⑨は『縁の下の力持ち』のような要素で、自分のスタイルを確立しながらも①~⑥、⑧をこなしていくのに必要だ。

こういう並び替えをすると分かりやすいかもしれない。

ーーー
①カビの生えた成功体験は捨てる。
  ↓
②現場の変化を素早く察知する。
③『現象』から『事実』を見極める。
  ↓
⑤ニーズを絞りこみ、得意分野としてレベルアップする。
⑥複数の先行目標を持つ。
⑩テーマを決めて学習し続ける。
  ↓
④ひとつだけ飛び抜けた強みを持つ。
  ↓
⑧自分から提案して小さな成功体験を作る。

  
⑦基本に忠実でいる。
⑨煙たがられてもいいから信念や意見を持つ。
ーーー

今年も残すところほぼ1ヶ月。今年を振り返り、『今年も終わりよければすべてよし』で幕を閉じたいところ。2013年の手帳には、この①、⑦、⑨を書き写そうと思っている。


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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2012年11月12日月曜日

雨の日はジャグリング


【今回のテーマ:雨の日はジャグリング】


最近またテニスを始めた。シンガポールは日中は暑すぎて熱中症になるので、だいたい私は夜の8時か9時から1時間のトレーニングを始める。それでも汗ダラダラだ。ヒ~。

『また』始めた、と格好つけて言ったが、とは言ってもかなり長いことやっていなかったので初心者同然。ボールは返せるものの、コントロールは悪いし、フォームも注意される。最初は優しかったコーチも私が固定客となった途端だんだん本性を表しはじめ、最近ではスパルタだ。『もうそれ注意するの5回目だぞ』とか、『集中しろ』とか、正直職場ではあまり言われることがなかったことを言われている。まさに部活気分だ。

昨日のトレーニングでは、『確かにスタミナはある(←日頃から走っているおかげに違いない)。ただ、最初多少遊んでいるというかヘラヘラしていて、ミスし始めるとだんだんやっと集中していい球を返してくるようになる。もっと最初から気合いを入れてほしい』とのこと。

馬力は認められ、コーチから『ディーゼル』というあだ名で呼ばれているわけだが、こんなんじゃないと悔しい。そこで少しビデオやいろんなサイトを見て、自主練の強化を目指している今日この頃。そうやってコソコソと情報収集したり練習をして、いつかすごいショットでコーチをギャフンと言わせてやろうと無理なことを本気で企んでいるが、ひとつのポータルでちょっと目を引いたトレーニング方法があった。

『雨の日は3つのボールでジャグリングの練習をしよう』ということだ。

ジャグリング?テニスと関係あるの?
…と一瞬思うが、『視界全体で状況把握しながら一点を集中して見る』という目の訓練だという。ついつい周りのことに気を取られてボールから目を離してしまいがちだが、それではゲームで勝てない。雨の日はそういうこともトレーニングしましょうね、ということだ。

なるへそ。

このジャグリングというのが何だか私の中では非常にしっくり来た。

人生そのものではないか。30代になると20代よりも人はそれぞれの道を歩むんだなあという認識が強まるが、それでも日々の生活に気を取られて自分の中長期的目標を見失ったり、どこか周囲の選択と自分を比較して自信を失ったりすることがある。自分は自分、でやっていくには、把握していても敢えて見ない、ということも必要なのではないかなあ。

ジャグリングですよ、ジャグリング。

…という話を友達にすると、シビアな彼女には『いやその前にまずボール落とさないことが重要でしょ』と指摘された。確かにボール落としてたら何にもなりませんよね。

『「仕事」「(置かれた)環境」「人生観」という3つのボールをうまく回しながら、落とさずに、自分の目標へと意識をフォーカスできるか。そういうことですよ。』

す、鋭い。
…ですよね。

まあ、でもあんまり遠くを見るのも大変だから、最初は今週の目標を見失わないことから始めよう。

そんな気分の月曜日。今週もがんばりましょう。


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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2012年11月8日木曜日

日々のちょっとしたことをトリガーとして活かす


【今回のテーマ:日々のちょっとしたことをトリガーとして活かす】


シンガポールに来る前、よく『年中ずっと同じ天気でなんだかつまらない』という話を聞いた。
確かに、来る日も来る日も蒸し暑い。そして最近はものすごい雷雨というかスコールが一日に一回ぐらい起きる。これがすごくて、突然ドドーン!と、『え、まさか、ついに近所に落ちたかい?!』と思わせるような雷から始まることが多い。雷なんてヨーロッパにいる間はほとんどなかったので、かなり最初は驚いた。

が、慣れると、『お、今日は午前中のうちに降ってくれるのか。ありがたい~。』とか、『これじゃあ、1、2時間は外に出られませんねえ。』という感じだ。まあ、もちろん外に出てもいいのだが、私は昔から雨の中外を歩くのがとても嫌いだ。(呆れた母親に『別に角砂糖じゃないんだから、濡れても溶けないよ!』と謎にたしなめられたものだ。)だから選べたら外出しない。スコールになると、安全を期して一気に車の流れも鈍化し、渋滞となる。周りも「じゃあちょっとカフェに入るかラ~」となり、全体的にダラっとなる。効率が下がる感じだ。

そういうわけなので、雨が降って家やカフェに閉じこもるときは、一人の場合はA+Sについて考え、『雨降って地固まる』を狙う。そうすると、大抵一日数時間は(多少気を散らしながらも)ひとつのことを考えるようなリズムができる。雨が降らない時にはちょっと得した感もあり、自分のセコさを感じる。それに今のところ、『アウトプットはこれ』というのを決めていないので、具体的に毎日のアクションにつながっていないのは確かにまだまだだなと思う。それでも雨が降った時ぐらいはそうしよう、と思う。

その他、暑い国なので外出の際も必ず水分補給をする。自分で飲み物を持ってきていても、どうやら食べ歩きというのは良く思われないらしく、歩きながら飲んでいるとチラっと見られる。(ちなみに地下鉄の駅構内の中で食べたり飲んだりしても罰金らしい。)水分補給にも、ちょっとそこらへんのいすに座ることとなる。あるいはカフェに入る。そういう時にちょっとした暇が出来るので、A+Sメモ帳は持ち歩くようになった。これは完全に自己満足で、基本は書いた記事のリストという自分なりの小さな成功の蓄積を眺め、これからのアイデアの殴り書きに目を通し、多少ニンマリするだけだ。(周りから見ると多少怪しい人かもしれない。)

これだけ毎日雨が降っているのになかなか進歩がないじゃないか、という考え方もあるが、でもまあ自分への意識付けというか、今は暇人なんだしこれぐらいはやりましょうよ、という日々の自分への課題としては機能しはじめていると思う。結果はきっとこれからついてくるはず…。

正直、A+Sもシンガポールという環境だからどうにかこうにか転がりはじめているのかな、という気がしている。以前より時間があることに加え、環境が変わらないことが、着実さを無理矢理教えてくれる。『雨にも負けず、風にも負けず、、、』という試練はない。『秋になったから何だか心がモノ寂しい』『冬だから寒くて』『春はやる気が出る』『夏は遊びたい』などという気持ちの揺れも少ない。『シンガポールは今日も晴れのち曇りで気温31度。湿度は予想で80度。以上。』なのだ。天気予報を見ることもない。

ほぼ毎日起きることをトリガーとして、アクションを連鎖させるというのはなかなか悪くないと思う。例えば、朝電車に乗った瞬間にケータイをバッグに入れ、本を取り出す。そうすると何となくインターネットをするのではなく、ちょっとした読書の習慣ができてくる。あるいはもっとプラクティカルなことで、朝起きた瞬間にベッドを整える、すると忙しい朝にバタつかなくていい。私は最近は起きたらパジャマからジムの洋服に着替えるようにしている。すると『行きたくない』が、『行くしかないか』に変わる。(これは毎日走っている方に教わった秘訣。)

とはいっても自己改善ばっかりしていたら正直人生に疲れるので、『電車の中では徹底的に無になる』というのでもいいと思う。『ため息が出始めたら、15秒手を休める』というのはどうか。フランス人の子供によると、『夏は休暇中の2ヶ月間、頭を空っぽにしないと新学期に新しいものが入ってこない』という。毎日ベストは難しいし、厳しいことばかりを自分に課すと、サブオプティマルな状況でダラダラやる習慣が出来てしまっているのかもしれない。

週末まで2日!今日と明日は今週やると決めたことにフォーカスし、金曜日は気持ちよくサクっと仕事を切り上げるのはどうだろう?
今日も1日がんばろう!


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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2012年10月29日月曜日

3の波


【今回のテーマ:3の波】

先日、『個として飛び出すグローバル』というタイトルまでは考えついたことを書いたが、オーストラリア旅行中もこのタイトルが頭から離れなかった。

帰国して、まずは念のため、『どこかの誰かのパクリじゃなかろうか』、とグーグル検索してみた。が、どうやらそれらしきものはヒットせず。しめしめ、とりあえずはこのタイトルを使わせてもらおう。
(ちなみに、この検索で「キン肉マンの技一覧」が結果に出て来たのはなぜだろう…。)

少し話はずれるが、私は空港が大好きだ。学生時代も実家と東京の往復や、海外に住んでからも帰国や出張など、海外渡航を一人ですることが多かった。今いる場所と目的地の間の、なんだかとてもニュートラルな場所で、心は目的地、体は現在地、という環境。そこでなぜだか毎回『結局のところ自分が一歩踏み出すしかない』という謎のやる気が出て、何かしら新しい一歩なり決心なりにつなげることができる。今回も移動中あれこれ考え事ができたのも、私の中での『空港』の意味付けのおかげだと思う。

今回は、12年振りに再会した友達のおかげで、当時の自分を思い出し、ここ12年を少し振り返ることができた。
考えてみると、30になった後、『10年ひとむかし』という言葉の意味がやっと分かるようになった、と私は周囲に熱く語っていた。私の場合は、2000年当時の経験のおかげで自分は10年間転がり続けることができた、ということ。そもそもビジネス系じゃなかった私という石を拾ってくれた当時の上司がいて、『ま、どうなるか分からないけどとりあえず転がしてみるか~』、と思ってポイッと投げてくれたことが、まずはひとコロ、にコロコロ、と進んで行くきっかけとなったと思っている。私にとっては会社という環境がとても新しかったし、やる気のある人が周りにいてくれたおかげで、大学生なのに会社で働くなんて、少し大人になった気分がした。感謝、感謝。

そこから転がりだして12年。『転がる石にコケはつかない』、なんて大嘘だ。打撲するは、骨折するは、やけどするわ、本当にコケなんて可愛いものじゃない。まあしかし、どうにかそうやって傷つきながらも転がりながら最近思うのは、その中にある『3の波』。

要領がいいのか悪いのか、私の場合は大抵、『ホップ・ステップ・ジャンプ』と、3ヶ月でひとつのサイクルがあり、これを1年の間で4回繰り返す、完全に四半期決算系だ(コーポレートに長くいすぎたか…)。そして今回振り返ってみて気づいたのが、だいたい3年で一回転するサイクルで進んで来ている。というと、10年ひとむかしではなく、より正確には『9年ひとむかし』あるいは『12年ひとむかし』なのかもしれない。

もちろん、ジャンプしたときにずっこけることもあるので、必ずしも上向きに進んでいるというわけでもなく、時々振り出し近くまで戻ることもある。ただ、自分の生き方の波のようなものの大まかなルールが分かると、『あ~、今はホップ中だし』『ステップで踏ん張ろう』『そうか、ジャンプでずっこけちゃったのね』『今期は赤字決算、来期がんばりましょう』などと、気持ちの上での処理が楽になる。こういうことに気がつくようになり、歳を取ると見えるものがあるんだなあと実感。うん、悪いことばかりではないではないか。

私の大人人生のサイクルは2000年に始まったということは自分では確信している。しかも分かりやすいことに、最初の企業勤務経験は2000年1月スタート。そこからこの3年サイクル、『12年ひとむかし』がそろそろ終わりに近づき、来年から次の3年サイクルが始まると考えると、今はジャンプ中の第4四半期。やばい、年次決算準備をしなければ。中長期戦略策定も発表するタイミング。

今サイクルに飛躍はあるのか。あるいは『尻もちイテテテテ、振り出しに戻る』の歳で終わるのか。そろそろ赤字決算の見通しを発表すべきか?

目下の目標は、とりあえずA+Sをほそぼそと継続しながら、2013年から『個として飛び出すグローバル』企画で記事を書けるように頭の整理や準備をすること。

でもなんせもうすぐ11月。気づいたら来年になってしまう。
急がば走れ。回っている余裕はなさそうなので年末までは走るしかないようだ。

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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2012年10月2日火曜日

文化は心に根付くものーMondovinoを観て

シンガポールでは映画館で放映される映画の種類が1パターンで、ハリウッドのブロックバスターが中心。中国、韓国、日本などの映画も選択的に放映されたりするが、ロンドンのICA(Institute of Contemporary Art)の映画館に匹敵するような、いわゆるアート系の人が行くようなちょっと変わった映画館をまだ見つけられていない。(ないのかもしれないと多少絶望的になってきている。)

そういうわけで、時々(仕方ないからというと失礼だが)フランス映画を見にフランス文化会館、アリアンス・フランセーズに行くのだが、先日、同会館のワインイベントの一貫として、無料で「MONDOVINO」というドキュメンタリーが放映されたので行ってみた。

このドキュメンタリー自体は新しいものではなく、2004年にリリースされたもの。自身ソムリエであるJonathan Nossiter4年間かけて40万ドルで制作したらしい。父親がワシントンポスト、ニューヨークタイムズの特派員であったため、彼自身はフランス、イギリス、ギリシャ、インドで育ったという、まさにグローバル人材だ。ハンディカムで撮られた映像であるため、ブレがすごくて多少みづらいものの、カンヌのパルムドールに選ばれたこともあり一時評判になった。が、これまで見に行くチャンスがなく、なんとまあ、8年後にまさかのシンガポールでの観賞となった。

グローバルに、資本主義的に、大きくワイン事業を展開するワインコンサルタントのMichel Rolland(フランス人)、そしてカリフォルニアワインのドン、Robert  Mondavi(アメリカ人)、そしてかの有名なワイン批評家Robert Parker(アメリカ人)。ワインの世界におけるグローバリゼーションの波と、効率化への賛同派、反対派の様子が描かれている。(もっとも、反対派をサポートするバイアスがかかっている内容だが。)

会社で働いた経験を持っていると、この資本主義的発想に当然ながら合意する点も多い。いい商品を作り、多くの人に楽しんでもらう。それにより売上も増加し、より良いものがどんどん作れる。自社商品を世界に流通できる。このグローバル化の流れは止められない。だったら抵抗なんかするよりも、うまく付き合うしかない。

一方で、このワインという心にしみた文化の哲学を語る「抵抗勢力」のワイン農家の言葉はひとつひとつ重い。敏腕マーケターのめまぐるしい展開に、『そんなのはワインじゃない』とばかりに抵抗する。とはいっても、完全に対立しているわけではなく、改善の必要性は感じている。『でも何だろう、この心に強く感じる抵抗感は』という苛立ちを彼らは感じているのだ。

ここで少し話は飛ぶが、たまたまタイミングよく、『平成進化論』の鮒谷さんの日刊メルマガ(101日付『人間国宝になりたい!』)に、このような言葉があった。(抜粋ではなく内容の一部をこちらでまとめた。)

商品への注力と商品デザインの注力バランスが100だと、腕は人間国宝級、作る商品は天下の逸品、けれども売り込むことは全くできない。

商品への注力と商品デザインの注力バランスが010だと、敏腕マーケター、でも一歩間違うと悪徳詐欺師。

「売る」のではなく、「売れていく」にはどうしたらいいのか。

(余談だが、ちなみに、この記事はご自身の「カリスマ性のなさ」(派手な演出のなさ)についてセミナー参加者にコメントされたということについて書かれたものという。私も一度ロンドンでセミナーに参加して、ちょっとだけ直接お話させてもらったが、本当に変な派手さがない、とても謙虚で、しかし人間的に魅力のある知的な方だった。ちなみに、ご自身は「商品95:デザイン5の人間国宝的な生き方」を目指したいとされている。)

ビジネスをしていると、売上、収益性、などと言った形で勝敗が見える。だから伝統だけに固執することは難しい。ただ伝統を重んじる国や文化で育ったものには資本主義的論理一本やりが果てしなく軽く感じられる。しかしこれまでの「売れていく」への努力が「売る」力に負けそうになっている

のだろうか。

短期的に見るとそうかもしれない。ただ、長く栄えるためには、「売れていく」要素、つまり商品への注力が必要だ。キャピタリズムギラギラのワイン農家側にとっては、フランスの老舗と対抗していくために、当然ながら今は商品デザインで画期性を持たせる必要がある。だから最初はそこへフォーカスするのは当たり前だ。

ただ長期的には、商品への注力と商品デザインの注力バランスの舵取りをうまくやったものが生き延びるのだと思う。だから、いつの日か、彼ら(の子孫)がフランスのワイン農家と同じようなことを語る日が来るのではないか。文化はそうやって育って根付いていくものだと思う。

この映画を見たあと、漠然と「何か書きたいなあ」と思った。でもタイトルはどうしようかな、と。「ワインのグローバル化」という直球にすべきか、あれこれ考えたが、多少飛躍するものの「文化は心に根付くもの」とした。ワインのグローバリゼーションに対し、どちらのポジションを取るにしても、このフランス人、イタリア人のおじいさんたち(おばあさんたちがあまり出演してなかっただけです)の人生哲学・ワイン美学には心を動かされるに違いない。特にワイン好きの人には美味しいドキュメンタリーだと思う。



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【参考記事】
Mondovino (IMDb)

平成進化論(該当記事はまだバックナンバーにアップされていませんでしたが、平成24101  平成進化論 3305号「人間国宝になりたい!」です!)


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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2012年9月25日火曜日

BORING IS PRODUCTIVE - ルーチン、万歳?

今朝、メールの整理をしながら読んでいた記事で目に留まったものをご紹介。
タイトルは、『BORING IS PRODUCTIVE』。

Harvard Business Review Blog 
"Boring is Productive" (Sept 19, 2012) by Robert C. Pozen

作家のMichael Lewisがオバマ大統領に関する記事を書くために半年ほど行動を共にした際のこと。大統領になるにはどのような心がけが必要か?という質問に対し、運動をし体を鍛えること、そして次に挙げたのが、日常生活に必要な小さな決断を極力減らすこと。だから大統領はグレーかブルーのスーツしか着ないそうです。

どんなに小さな決断でも、限られた労力を消耗するのには変わらない。どの洋服を着るか、何を食べるか、という日々の何でもないことを決めるだけでもメンタルエネルギーを消耗する。

なので、ルーチンはルーチン化しよう。
大して重要ではない決断でエネルギーを消耗するのはやめた方がいいのでは?

簡単に言うとそのような内容のブログエントリーです。

私はいつも同じ形の服を色違いで買ってしまうことが多く、そういう私に呆れ、ある人が「パレット」というあだ名を付けてくれました。黒、チョコレートブラウン、ベージュなどが中心で、買う形も色も決まっており、「それなりに君らしい」とは言われながらも、「斬新さに欠ける」とか、「もっと明るい色を着たまえ」、「冒険はしないのか」などとのコメントも多いわけです。

「でも、明るい色着ると、気が散るんです、私。」

そういうといつもゾッとされていましたが、おそらく、自分なりにセンスのなさを肯定しつつ、こういう小さな決断をなるべく排除しようと無意識で動いていたのかもしれません。(完全に後付けの理由です。)

ただ、残念なことに、どれだけオバマ大統領がブルーとグレーのスーツだけを着たとしても、国内情勢、世界情勢の重荷は軽くならない。

どれだけルーチンをルーチン化して選択肢を減らして生きたところで、人生の重要な問題は難しい。エネルギーがあるからこそ、悩む力だけはたくましいのかもしれない。

最近、口ぐせのように「人生とは重くて長いものである」と言ってしまいますが、もしかして悩む体力を減らすためにもう少し運動したほうがいいのではないかと思い始めています。

人生とは、重くて長いものである。
でも時々見える空の虹に人は生かされている。

Boring is not productive.
But boring parts of life make exceptional events shine.


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【参考記事】

Harvard Business Review Blog 
"Boring is Productive" (Sept 19, 2012) by Robert C. Pozen
http://blogs.hbr.org/hbsfaculty/2012/09/boring-is-productive.html

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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。

2012年9月6日木曜日

読んでいない本について語る技術


以前、『どうやったら読んだことがない本について語ることができるか』("How To Talk About Books You Have't Read")というタイトルの、フランス文学教授でもあるフランス人が書いた本を読みました。

(フランス人っぽいなあ…と思いつつ。)

ちなみに、読んだことがない本について語るのは大学教授が得意とする分野などと自嘲のコメントもありつつ(「大学で文学を教えているという職業柄、読んだことがない本についても残念ながら語らざるを得ないこともしばしばで…」)

何はともあれ。

著者が指摘していた点として特に記憶に残っているのは、本が書かれたコンテキストを理解すれば、全ページ読まずとも適当にチラ読みする、あるいは読んだ人の話を聞くだけで本のポイントが理解でき、よってあたかも熱心に読んだかのような口調でその本について語れるということ。

筆者曰く、
「読書を趣味とする人は多いものの、読むのには時間がかかる。しかし現代人は忙しい。だったら読まずとも語れるなら、あるいは読まずとも人が言っていたことを借用してあたかも読んだかのように振る舞えるならば、なぜわざわざ本を読む必要があろうか(いやない)」。
「そもそも読書自体は面白くない。」
「本物の読書家は、読むこと自体ではなく、その文学について考えることを重要と考える。」
「一冊の本について熟知することではなく、その本が文学全体の中でどのような位置づけにあるか、ということが最も重要。」

そうか、コンテキストさえ理解すればいいんだな。しめしめ。
と、私のような怠け者で愚か者はつい浅はかにも思うわけです。

しかし、1分考えたら、待てよ、と思うのです。

このコンテキストを理解する、ということが実は非常に幅広い知識や経験を要します。

そもそも、どうやってそのコンテキストとやらを理解できるレベルの情報を集めることができるのか?

もちろん、科学的な分野の本であればベーシックな理論を知ることが必要ですし、多くの場合は専門分野に加え、歴史や文化など社会学的な要素、加えて学者などでも誰と誰の意見・見解が対立しているかという力関係の理解さえも要求されます。

つまり、真面目に考えると果てしない知識の旅なわけです。

インテレクチャル・ショートカット。そんなもの、本当にあるのか。

この人…、実は最高に威張ってるんじゃなかろうか?!(やっぱフランス人!!)

と疑いを持ち始めました。

知的訓練というのは、一夜漬けの世界ではない。死ぬほど本を読んでも、一歩下がって世界を客観的に見れなければ、多分情報はネットワーク化しない。

それでもくじけずに少しづつでも何かを学ぼうと思い、自分を励まし続ければ、死ぬまでには「読まなくたって分かる」とかっこいいことを私も言えるようになるのでしょうか…。

コンテキストを理解する。
ここまでアジアに関して無知に近い状況だったので、この言葉がアジアに来てからどっしりと重く感じており、急がば走れで急ピッチに情報収集や勉強をしています。
早くアジアについても自分の言葉で語れるようになりたいです。


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【参考/おすすめ図書】
How To Talk About Books You Have't Read
by Pierre Bayard


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※以前『Analyze + Summarize』として掲載していた分を引っ越しさせてきました。
無断での転記引用はお断りしています。